さて、この世には男の娘というジャンルがある訳であるが、その意味とはまぁ言うまでもないが、女の子と見まごうような男の子、という意味である。そんな存在が果たして本当にいるのか、という疑問はさておき。逆に男の子に見える女の子、とはなんと呼べばいいのだろうか? 正直知る限りでは、私はその固有名称を知らない。もし固有名称がないとすれば何故か。それはきっと、そもそも例がないから、という事になるからかもしれぬ。
ごく普通の少年、諒介。彼はある日、高級レストランへまるで告白のような呼び出しの言葉と共に、呼び出されていた。その相手は彼にとっては思い至るところあり。恐らくその相手は、人気声優でもある義妹、雛姫。普通に考えればこのままハッピーエンド、義妹とのいちゃ甘ラブコメが始まってもおかしくはないであろう。しかし彼にとっては、憂鬱なものであった。その理由とは、彼は過去のとある切っ掛けから、自分からは近づけない程度に女性が苦手であり。故に何とか傷つけず、フる方法はないのか、と思案していたのである。
「そう。わたしはわたし。ボクじゃない」
その道すがら、ボールをぶつけられると言うアクシデントにより一時入院する事となり。彼の元を訪ねてきたのは、原因ともなった謎の少年、颯。 何やら距離が近めな彼、と入院中に仲良くなって。しかし、彼は気づいていない。颯(表紙)は実は女の子であると言う事を。最初の印象、的なもので勘違いしてしまい、それに気づいた颯も一先ず関係維持のために、彼の前では男の子として振る舞おうと決め。何ともちぐはぐな生活は、幕を開けようとしていた。
諒介の友人と一緒にゲーセンに行ったり、皆でラーメンを食べに行ったり、とまるで男友達同士のような日々を送る中。雨に降られて諒介の家に寄って、更には一人暮らしである颯の家を訪ねた事で、関係が動き出すフラグが整って。誤解を解いて自分が女の子であると伝えた颯により、今度は男友達のような女友達、としての日々が始まる。
「同じ人を好きになったあなたに、知っておいて欲しかったから」
それを目撃し、心穏やかでいられる雛姫でもなく。しかし同じ人を好きになったのだから、と諒介に関する事を共有し。お返しと言わんばかりに、颯もまた雛姫と諒介を向かい合わせるお手伝いをし。更にその後、颯と、諒介の親友である響也も巻き込み、四人で遊園地に出かける事となって。
「―――わたし、コレでも女の子なんすよ?」
その中、勝負を決めようと動こうとする颯。だが臆病でその足はすくみ、そんな彼女を諒介は苦手を越えて受け止めようとして。 颯もまた、一歩を踏み出すのである。変えていくために必要な一歩を。
爽やかに恋が始まる、甘酸っぱい面白さのあるこの作品。甘酸っぱいラブコメが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。