さて、義妹、もしくは義弟という存在はラブコメにおいてはどれほど存在するのであろうか、という事をふと思った次第であるが実際はどうなのであろうか。義弟、は中々見かけないかもしれない。義妹、は時々見かけるかもしれない。ではもし義弟で義妹なヒロインが居たら、それはどんなヒロインとなるのであろうか。(無論両性具有、という意味ではない)
父子家庭で育った、というポイント以外はごく普通の高校二年生の少年、涼太。「メンデルの法則には血が通っていない」と常々豪語する彼にある日、父親の再婚話が持ち上がる。
あれよあれよと言う間に両家の家族の顔合わせとなり、そこで出会ったのがこの作品のヒロインである晶(表紙)である。
表紙を見ればもうお分かりであろう、晶がまごう事無き女性であるという事くらい。しかし、涼太は「きょうだい」という言葉の意味を勘違いし、晶が男の子であると勘違いしてしまったのである。
「あの、最初に言っておくけど馴れ合いは勘弁してほしい」
そんな一言から始まった関係、だけど男同士だからという気安さがある意味いい方向に作用したのか、男同士の距離感と馴れ馴れしさで、涼太は晶に接していく。
兄弟としてゲームで遊んだり、勘違いさせるような甘めな言葉を投げかけたり。そんな彼の接し方が、関わり方が不器用なだけで実は純粋な晶の心を開いていく、その心を揺らしていく。
しかし、これもまた画面の前の読者の皆様はお察しであろう。勘違いから始まった関係と言うのはいつか誤解が解ける日が来るという事を。その勘違いはいつか是正される日が来るという事を。
ひょんな事から二人でお風呂に入る事になり、否応なく知った晶の正体。今まで出来てきた当たり前の事が出来なくなっていく、距離感を掴みかねていく。
「兄貴とはこれまで通りの距離感がいい。むしろ今より僕ともっと―――」
だが、一度心の変化を迎えたのは涼太だけではない。今までの献身と、自分を見つめてくれた、受け入れてくれたと言う思いから。彼への恋を自覚した晶の、押せ押せの体制の恋の攻勢が幕を開ける。
時にぼんやりと彼の事を思ったり、女子としての素顔に涼太がドキドキとする中で。晶は徐々に、涼太が抱えているものの正体を知りたい、自分も受け止めたいと願うようになっていく。
「だから、今は義理の妹ってことで、そのうち兄貴のお嫁さんにして」
同じ寝床での睦言、自身が抱えた愛を語る晶に涼太が明かす、自分が知っている秘密。「メンデルの法則には血が通っていない」、という言葉の真実。
「だから結婚しよ? 僕と家族になろ? 僕、兄貴と兄貴の赤ちゃん、一生大事にするよ?」
その真意と、涼太が家族にこだわる理由を聞き。晶は願う、家族になる事を。家族を越えた「家族」になりたいと、まだ足りないともっと多くを、と願うのである。
異性愛と家族愛、二つの愛と愛の真ん中で、義妹とのいちゃいちゃが甘くも優しい、ラブコメとして極上であると太鼓判を押したいこの作品。
真っ直ぐなラブコメを読んでみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。