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読書感想:天使は炭酸しか飲まない2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、今巻の感想を書いていく前に、少し不穏なお知らせをする事をお許しいただきたい。それはこの作品が今、四巻が出るか分からないと言う、いわば、まぁ口にするのも憚られる例のアレな事態に陥っているのであるという事を。正直、とても勿体ない。この作品はこんなにも面白いのに。なのでこの作品をまだ読まれていない読者様は、是非読んでいただきたいし、そしてもう読まれていると言う読者様は周りにも布教していただきたい次第である。
では今回、我らが主人公である「久世高の天使」、伊緒はどんな恋に関わっていくのか。それは、負けが約束された恋。終わらせるべき恋に向き合い、自身の中の気持ちに向き合っていく巻なのである。
「相談に乗ってくれないなら、明石先輩が天使だって言っちゃいますよ?」
冴華の問題を解決し迎えた夏休み。テストの結果がダメダメだった伊緒は、複数教科の補習に励んでいた。そんな中、まずはバイト先、更には同じ補習仲間として現れたのは、伊緒と過去に繋がりのあった後輩、光莉(表紙)。伊緒が天使であると言う秘密を疑っている彼女は、直球勝負で疑いをかけながら、天使でなくても恋の相談に乗って欲しいと、伊緒とは接点があまりない級友である煌との仲立ちをお願いしてくる。
告白と言うのは、両想いの確認作業。そんな考えを抱き、伊緒の考えとは反発し。それでも協力する事を選んだ彼は、いつも通り仲間に協力を仰ぎ、自身も彼との接点を持ちながら、彼の考えに迫ろうとしていく。
『叶わない恋は、いつまで恋にしておけばいいんですか』
お泊り会のような当たり前の青春を過ごし、大学という将来の選択肢にも目を向けて。そんな中、中々煌の考えは掴めず、光莉の本心からの問いかけにも答えられなくて。勝負をかけると決めた夏祭りの前、明らかになるのは残酷な事実。煌は決して叶わぬ恋をしていると言う、光莉は絶対に失恋すると言う厳然たる事実。
「もしかしたら新しい恋は、今回の恋よりももっと、素敵かもしれないんですよ?」
それでも、光莉は涙交じりに、けれど朗らかに笑って見せる。恋を早々に吹っ切り、未来の恋へと早くも目を向ける。
「彩羽のことが、まだ好きなんだ」
「好きなままだって、いいじゃない」
対し、自分はどうか。まだ過去に囚われている、抜け出すべきか分からなくなっている。そんな彼の心を、優しく湊は肯定する、貴方は貴方でいいのだ、と柔らかく受け止めるのである。
伊緒の恋の本質に触れ、何かが少しだけ動く今巻。どうか終わらぬ夏にはならないでほしい。
そう願う次第である。
天使は炭酸しか飲まない3 (電撃文庫) | 丸深 まろやか, Nagu |本 | 通販 | Amazon