読書感想:追加戦士になりたくない黒騎士くん

 

 さて、「追加戦士」という単語は基本的にスーパー戦隊に特有の単語である。最近の追加戦士と言えば、語り部を名乗る毒蜘蛛であったり、私の思い出の追加戦士と言えば、ナンセンスが口癖のバイク型ロボを駆る戦士であるが、画面の前の読者の皆様にとって、自分の心の中に息づいている「追加戦士」は誰であるのだろうか? そんな存在は実は、本編開始前に実は既に戦っていて、本編開始後に戦いに復帰する、という場合もある。この作品もどちらかと言えば、そんな感じなのである。

 

 

突如、「怪人」と呼ばれる存在が出現し、日本に多大な被害を与えるようになって一年が経過したこの世界で。「黒騎士」と人々に呼ばれる存在がいた。その名は克己(表紙右)。とある研究施設に迷い込んだ時に、まるで運命のように遭遇した変身スーツを持ち出して。人々を護るため、日々戦い続けていた。

 

「分かってるだろ。俺は、お前達の味方じゃない」

 

そんな彼の後を追うように、三人組の正義の戦隊「ジャスティクルセイダーズ」がデビューし。最後の怪人と戦闘を繰り広げた後、彼は正義の味方に殺されるために正義に戦いを挑む。

 

「君、一般人からもワルモノとして見られてないよ」

 

が、しかし。死ぬはずだった彼は、戦いの後に捕縛され、戦隊の本部で監禁と言う名の保護をされる。今までの住環境からすれば段違いに良い環境の中、知らされる。実は自分は、世間からはワルモノではなく仮面ライダー的な正義の味方として見られていた事を。

 

確かにアンチはいるけれど、世論は概ね好意的。ジャスティクルセイダーズのメンバー、葵(表紙左端)、茜(その隣)、きらら(さらにその隣)に放っとけないと言わんばかりに構い倒され、それどころか高校も休学扱いになっていて、しかも本部から持ち出したスーツの盗難届も取り下げられ、彼は英雄の一人として迎え入れられる。

 

それもその筈。持ち出されたスーツ、その名も「プロトスーツ」。その名の通り試作スーツであるそれは、ジャスティクルセイダーズのスーツ一着にも劣る失敗作のスーツだった。しかし、何の因果か克己はそのスーツに完全適合していた、天然で。適合できなければ死あるのみ、そのスーツは真の主に出会った事で、その類まれなる力に逆に振り回されていたのだ。

 

 

急遽進められる、「黒騎士」の更なる進化の為のスーツ。その途中にも海中に叩き込んだ筈の怪人が復活し、四人でそれを倒すも迷惑な配信者によりその活躍が晒され。世論の混乱は何とか抑え込まれ、克己は少しずつ日常に復帰していこうとする。

 

だがそこに水を差さんと、新たな脅威が襲来する。天から来たのは異星人の戦隊、「セイヴァーズ」。戦いを挑むも、プロトスーツが彼等のスーツと同じ技術を有していた事で強制的に変身を解除され。彼は戯れと言わんばかりに、生命を吸い取る狂暴なベルトを装着されてしまう。

 

「忘れたから、殴りながら思い出すことにする!!」

 

悪ければ死亡、良ければ操り人形、その筈だった。しかし、そのベルトは。プロトスーツのコアと姉妹であるコアを使ったベルトは、克己を認め。宇宙人にすら予想外、白騎士とでも言うべき新たな存在が覚醒する。

 

「ようやく、ようやく見つけた」

 

全ての決着をつけるため、ジャスティクルセイダーズに後を託し、宇宙人の船に乗り込んで大暴れし。彼の活躍が一人の最強の目を奪う。その名はルイン。彼と五十時間以上にも及ぶ戦闘と言う名の対話の果て、自分に向かってきた彼の事をルインは愛して。彼を育てるため、地球へと送り返す。

 

一つの戦いは終わって始まり彼は帰る。だけどここからがきっと本当の始まりなのだ。

 

 

何処かシリアスを漂わせるドタバタの賑やかさと、ヒーローものの熱さ溢れる面白さが詰め込まれた今作品。ヒーローものを楽しんでみたい読者様には是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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