読書感想:アオハルデビル2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:アオハルデビル - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、悪魔と願いに彩られ振り回される鮮烈な青春、というこの作品の趣旨は前巻を読まれた読者様であればご存じであると思うが、悪魔はまだまだ存在しており、悪魔に憑りつかれる心の隙間を持つ者もまた、多く存在しているのである。それは何処にか。それは有葉のすぐ近くに。それが分かるのが今巻なのである。

 

 

「それは簡単さ。君の願いは、叶い続けているからね」

 

前巻の騒動の後、佐伊から告げられた小さな衝撃を伴う事実。衣緒花に憑りついていた悪魔、アミーは有葉に憑りついたかと思えばまた衣緒花に憑りついていたという事。願いが叶い続けている間は問題はないも、よりうまく付き合うために。ヘアピンという道具にアミーを封じ。有葉が悪魔を祓うのは、失踪した姉の夜見子にもつながると言う言葉だけが有葉の中に残る。

 

 が、しかし。文化祭も近づく中で再び悪魔の騒動が巻き起こる。三雨に呼び出され目撃したのは、頭に生えた兎の耳を始めとして段々と兎の特徴が表れつつある彼女の身体。しかし、佐伊の目から見てそれは奇妙な事態であった。彼女を蝕む悪魔は、侵食の度合いを強めている。けれど三雨の悪魔が起こしたと思しき騒動は観測されていない。出される結論は、三雨の願いの切実さが高まっているというもの。佐伊に託され、彼女の悪魔を祓う為に行動を始める中。有葉は彼女の願いに触れていく。

 

それは、有葉に長年向けていた思いから来るもの。しかしそれは決して叶わぬかもしれぬ願い。衣緒花の願いとは相反するその願い、何方かの願いを立てれば、何方かは立たない。二つの願いの間で板挟みとなってしまう中、見かねた衣緒花が自分が乗り出すと言い有葉は蚊帳の外に置かれてしまい、見守るしかなくなってしまう。

 

 だがしかし、それもまた願いの一面でしかない。伝えたい思いを持っていた三雨の願い、それは果たして有葉だけに伝えたかったものなのか。それだけではない。巡ってきた本番、自分を受け入れ伝えたかった思いを歌に乗せて。悪魔との激突の果て、本当に伝えたかった思いを伝えることに成功する。

 

「それで十分・・・・・・というか、それがいいんだ」

 

その思いを受け、有葉もまた伝えたい思いを届ける。それでいいんだという肯定を届ける。それは彼女との関係を確かに一歩、進めるものとなる。

 

けれど、どうもこの青春は平穏には終わらぬらしい。佐伊により看破された有葉の異常性、その彼女の元に舞い戻ってきた彼女。その来訪は何を齎すのか。

 

次巻も期待していきたい。

 

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