読書感想:あおとさくら2

 

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読書感想:あおとさくら - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、青春とは何なのであろうか。一瞬しかない時間、その時にしか出来ない回り道、青くて若いからこそ出来る、無茶無謀。その答えの数はきっと、星の数とは言わずとも、箱に詰められたチョコ菓子の数くらいには、幾多のカードを組み合わせたデッキの枚数くらいにはあるのかもしれない。だが、この作品を見ているとこう言える。青春とは、そこから繋がるラブコメとは―――君がいなければ意味がない。君無くしてはありえない、それが青春の答えなのかもしれない。

 

 

「勉強に小説。やることいっぱいだね、藤枝君」

 

図書館での出会いから早くも半年。別離の危機と少しの踏み出しを経て、少しずつ変わり出していく蒼。咲良との出会いがあったからこそ見つけられたもの、やってみたい夢に向かい少しずつ歩き出す。今まで色々なものを取りこぼしてきてしまったから、その歩みは遅いけれど。何もかもが手探りではあるけれども。

 

「やっぱり表現するっていいね」

 

自分にとっての表現するための武器を見つけたから、きっともう止まらない。咲良にとっての音楽がそうであるように、自分にとっては小説がそれである。そう気付けたのだから。

 

徐々に変わりつつある蒼。音楽への情熱を改めて見出した咲良に、それはまるで追いつこうとするかのように。変わり始めたのなら、その足は留まる事を知らぬ。新しい世界を見てみたいと、徐々に歩き出す先で世界は変わっていく。

 

「僕をグループに入れてくれないか?」

 

当然行く先は別の修学旅行、だが一部日程が被っているところもあると知り、同じ場所へ向かう為に、一歩踏み出して。関わり合いも薄い相手に、グループに入れてほしいと勇気を出してお願いして。今までは好まず避けてきた集団行動。だが皆で行動する事で見えてくるものだってある。少しずつ知って欲しいと行動する事で、彼の人となりは知られていく。

 

「何くさいこと言ってんだ、青春かよ」

 

そう、知らないだけで大切なものはすぐそばにあった。彼女との出会いが気付かせてくれた、そこにあるものに手を伸ばすことの大切さを。踏み出した彼に周りの者達は優しくて。咲良の元へ行くために抜け出したいと言う彼の背を、快く送り出す。

 

「僕はもっと、日高さんのことを知りたい」

 

 知った思いは、輝きは彼女が教えてくれたもの。彼女との時間は、もうかけがえのないもの。だからこそもっと、もっとと知りたいと願う。変化に揺れてもそれを受け入れ、その中で変わらぬものを見つけたいと求めていく。

 

そう、その思いはもうお互いに持っていた。ならば阻むものは無し。その帰結はありふれた自然、当たり前の結果。

 

だけどそれが一番大切なもの。自分だけの世界に彼女の居場所が出来た、それを受け入れられた。一人が二人になって、手を繋ぐ。それ即ち青春の息吹、等身大の輝き。

 

故、真に尊く有難い。感動する青春がここにはあるのである。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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