読書感想:こんな可愛い許嫁がいるのに、他の子が好きなの?3

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:こんな可愛い許嫁がいるのに、他の子が好きなの?2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品において「許嫁」、という言葉は繋がりの絆であり呪いの鎖である、というのはこの作品を読まれている画面の前の読者の皆様もご存じであろう。だが、全てのその鎖を解き放たねば、何も始まらぬ。幸太やクリス、氷雨たちの関係を前に進めるのならば、一旦全てを断ち切らねばならぬ。それは、何かを始める為に必要なもの。だからこそやらねばならぬのだ。

 

 

「考えてるもん、将来のこと。陶芸以外の選択肢だってちゃんと考えてる」

 

最後に立ち塞がる婚約、それは若き陶芸作家であり幸太の幼なじみ、二愛。クリスや氷雨たちとは違い、彼女と幸太は幼き日であるものの、自分自身の意思で婚約関係を結んでいる。だからこそ厄介、であるともいえる。

 

「すべての婚約を解消しちゃったら、わたしは何になるのよ」

 

だが、参謀であるクリスは集めた情報と彼女の態度の中から、二愛の本当の想いを推理し、敢えて行動せず自滅を待つと言う選択肢を選び。その選択肢を取る為、それぞれが動き出す中。内心の不安を覆い隠し、クリスは彼女について、更に知ることを決める。

 

彼女が熱中する、陶芸と言うものを体験し。更に、彼女の個展を訪れ。だがその場で見たのは、二愛が本来の陶芸家とは違う愛され方をしているという事。そして、それでも良いと二愛自身が知り、そして選んでいるという事。

 

「じゃあわたしは何を理由にしたらいいの?」

 

クリス自身が求めるのは、幸太自身が向き合う事。それもまた当然であろう。何故ならば、幸太と二愛の間にクリスも氷雨も、入り込めぬ。彼女の思いに決着を付けられるのは幸太のみ。その幸太へと二愛が明かすのは、切なる思い。幸太との婚約を、自分だけの特別性を生きる理由に据える、というあまりにも歪で重きもの。

 

彼女を救うには言葉ではいけない。ならば行動するしかない。今までは「許嫁」、という言葉に振り回されるだけだった。だが、もう受動は許されぬ。幸太はクリスの手を借り、初めて能動的に動き、小さくとも二愛の作品の良さを世の中に知らしめ。彼女に「陶芸家」としての理由を与え、縋っていた柱を折ることに成功する。

 

「今こそ俺たちは新しい関係になれると思うんだ・・・・・・!」

 

全てが終わり、フラットになり。改めて同盟者であったクリスと向かい合い。幸太は自分の思いを口に・・・・・・すれども肝心な所が締まらずに。その告白は、新たな混沌と騒動への入り口。

 

「こんな可愛い許嫁がいるのに、他の子が好きなの?」

 

何かが変わった、始まった。これからも、彼等の日常は騒動に満ちているのかもしれない。けれど、もう思いは決まった。ならば何だかんだ、大丈夫なのだろう。

 

シリーズファンの皆様は是非。最後まで満足できるはずである。

 

こんな可愛い許嫁がいるのに、他の子が好きなの?3 (電撃文庫): ミサキナギ, 黒兎 ゆう + 配送料無料 (amazon.co.jp)