読書感想:わたし、二番目の彼女でいいから。4



 さて、この作品は今巻で「高校生編・完結」、即ち第一部完、となるらしい。正直に言ってしまうと、その完結の文字がここまで別の意味で絶望に聞こえてしまうのは、私だけではないと思いたい。先に後書きの内容に少しだけ触れてしまうが、作者様は大学生編から、めちゃくちゃ爽やかな青春小説になるかもしれないし、笑えるラブコメになるかもしれない、と言われているが、果たして本当にこの作品でそんな事があるのだろうか。パンドラの箱を開けたら最後には希望が残っているが、この作品が開けようとしているのは、地獄の窯の底に隠れていた、より救いのない地獄への扉なのではないだろうか。

 

 

「もうツッコみきれませんよ!」

 

前巻、かの修羅場が巻き起こった後、桐島は一人、争いを止めようとして階段から落ちてしまい。「桐島事変」と彼が嘯く、ちょっとしたドジから始まる事件へと収束する。

 

「みんな全然、信じてくれないの」

 

「いいよ。桐島くんのためなら私、人生めちゃくちゃになってもいいもん」

 

 だがしかし、事態はそれでは終わらなかった。桐島が入院している間に、早坂さんと橘さんはそれぞれ動き出していた。それは正に、どこか壊れて暴走するかのように。普通に見えて、実はその目からは既に光は消えている。もはやなりふり構ってはいられない。少しでもより良い選択を、と軟着陸の場を探す桐島をこれでもかと揺さぶってくる。

 

「早坂さんの初めて、もうなにも残ってないよ」

 

「でも、一緒にめちゃくちゃになれるね」

 

お互いの事を蹴落とそうとするのではない、寧ろ蹴落とすという言葉すら生易しい。まるでお互いを完膚なきまでに壊そうとするように、マウント合戦を繰り広げ。桐島へ、共に地獄へ堕ちようと、光なき世界へと誘い込むかのように。三人の間の関係は、どんどんと壊れていく。選ぶ事で治すことはもう出来ない。それは破滅を決定づけられているから。

 

そしてその恋は、周りの何もかもを巻き込み歪み、侵食していく。橘さんの妹、みゆきも。そして今まで良心だった柳先輩すらも。愚かに健気にも人の身で立ち向かおうとしてきた者達の心を折り、破滅へと巻き込んでいく。

 

「ごめんね桐島くん、約束守れそうにないや」

 

そして、破綻の時は訪れる。健気にも選ぼうとする桐島、しかし「彼女」が告げるのは「桐島事変」の真実。誰もが皆、忘れようとしていた「彼女」こそが壊れていたのだと言う真実。

 

時は巻き戻らぬ、そして過去は取り返せない。何もかもを掴もうとした彼は誠実なのか、クズなのか。それは正しい判断だったのか、それは何も分からない。

 

だけど、時は進んでいく。新たな関係は、容赦なく始まる。その先にあるのは、穏やかな光か、はたまた修羅場の深淵か。

 

怖いけれど引き込まれる、それはきっと、この先も続くはずである。

 

わたし、二番目の彼女でいいから。4 (電撃文庫) | 西 条陽, Re岳 |本 | 通販 | Amazon