読書感想:推しの清楚アイドルが実は隣のナメガキで俺の嫁

 

 さて、人間だれしも、と言うのかは分からぬが人間の中の多数には裏の顔、隠している思いを持っている者、というのも存在する。そういった顔とは、表に出ている顔とは真逆の顔である事も多い。ではもしそんな顔を知ってしまったのならば皆様はどうされるであろうか。この作品もまた、そういった作品なのである。

 

 

「汚しちまうなんて、申し訳ない!」

 

何にも熱中できない退屈な日々を過ごしていた少年、竜也。彼のそんな灰色の日々は、推しのアイドルが出来た事でその色を鮮やかに変えた。四六時中、それこそ寝ても覚めても、何を差し置いてでも推すその名は蒼衣ツバサ。歌唱力抜群の清楚アイドル。

 

「あんたが、あたしの恋人になりなよ~」

 

 が、しかし。ある日竜也はひょんな事から彼女の正体を知る事となる。彼女の中の人、その名は舞香(表紙)。見た目ギャル、態度は人を食って舐めたようなクソガキ。しかも彼女はあと一年で、親の決めた許嫁であるちょっと年上の御曹司と結婚することが決まっていて、引退も控えていると知る。ショックに打ちひしがれる彼へと舞香が提案したのは、婚約を回避するために偽装の恋人関係となる事で。推しを守る為にも、渋々彼はその提案を受ける事となる。

 

ツバサの趣味を理解する為にゲーセンでぬいぐるみを取ってきたら、ニセモノじゃんとからかわれたり。母親からの信用を得るために、遊園地でデートすることになったり。相も変わらずからかってくる舞香に振り回されたり、仕草の端々にツバサの面影を感じたり。

 

共に過ごす日々の中、彼の中でツバサではなく舞香を見る視線が増えていく。彼女の内面を見て、彼女に惹かれていく心が芽生えていく。だがそれは、偽の恋人であっても一ファンという立場に固執しようとする自分にとっては、煩わしい物。本当に大切なのは何か、それを思い悩む間に舞香の婚約は強行され、二人の距離は離ればなれとなる。

 

「推しのためなら無限の力が沸いてくる、それがファンってもんだ」

 

 このまま終わっていいのか、否、そんな訳もない。推しが困っている、ならばやるべきことは一つ。親友に背を押され、竜也は婚約者との一騎打ちに挑む。力の差は圧倒的、勝てる要素はゼロに等しい。だがそれでも決して諦めぬのは何故か。簡単な話だ、何故なら彼は「ファン」であるから。推しのためなら命も賭ける、大切なものだってなげうって見せる。それが推すと言う事であり、為すべき事。そして背負うものがある者は強いのは、分かり切っている事であるのだ。

 

タイトルからは想像も出来ぬ程に、真っ直ぐ直球にラブコメしている今作品。王道系なラブコメが読んでみたい読者様は是非に。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

推しの清楚アイドルが実は隣のナメガキで俺の嫁 (講談社ラノベ文庫) | むらさき ゆきや, 春日 秋人, さいたま, かにビーム |本 | 通販 | Amazon