読書感想:ホームステイを受け入れたら、俺のことを全肯定してくれるオタク美少女だった

 

 突然ではあるが、我々をいつでも肯定してくれるのはtwitterで有名なコウテイペンギンの子供である「コウペンちゃん」である、というのは昔何処かの作品の感想でちらりと明言した気もするがそれはさておき。画面の前の読者の皆様も無条件に肯定してもらいたい、と思った事はあられるであろうか。偶には何も考えずに誉めてほしい、認めてほしい。そう思われた事はあるであろうか。

 

 

しかし大人になるにつれてそれは難しいもの、になってくる事が多い。何故ならば大人になり社会人になってある程度すると「出来て当然」、という認識にされてしまうのである。出来て当然、当たり前。だからこそ中々褒められぬ。

 

 でもこの作品のヒロインである仏国JK、ルシィ(表紙)。彼女は無条件に主人公である創路を肯定してくれる。それは何故か。何故ならば彼女にとって彼は「憧れの相手」と言って差し支えないからである。

 

ホストファミリーになる筈だった叔父の急な引っ越しにより彼が受け入れ先になる事となり。大手ゲームメーカーのシナリオライターとして勤務する創路と、ゲームクリエイターを目指す彼女は共同生活を始める中、お互いに影響を与え合っていく。

 

ルシィにとって創路は「ししょー」であり、自分が憧れる業界の最前線を走る人。彼の仕事ぶりを見て学び、時に彼から教わったりして。自分の知見をどんどんと広げていき、あいまいだった夢に具体的な色を付けていく。

 

創路にとってルシィはなんであろうか。今は何とも言えぬ存在かもしれぬ。だが、私生活が壊滅的だった彼の生活をルシィが手助けすることになり。創路もまた今までは知らなかったアウトプットの形を得て、少しずつ彼の中で変化が生じていく。

 

往き遅れ気味(?)なお酒好きな先輩、まひろに家まで訪問されて絡まれたり。インターン生である後輩、エヴリンにルシィの夢を叶える為にくノ一のコスプレをしてもらったり。更にはまひろの妹でありルシィの同級生にして友達となった小春とアキバに出かけたり。

 

賑やかで新たな刺激に満ちた日々が始まる中、ルシィは創路が昔、一つゲームを作っていたと知る。そのゲームを知るために創路から出された課題に答えを出し。その果てに知る、かつて母親を亡くし引きこもりだった自分を救ってくれたゲームを作ったのが創路であるという事を。

 

「そのゲームが一人の少女を救ったと言う事実を是非誇りに思ってくださいっ!!」

 

 創路にとっては取るに足らぬ、自分のガラでもないゲーム。だから誇れない。しかしルシィはそんな「ししょー」に鬼気迫る勢いで思いをぶつける。例えそんなゲームでも自分は救われた、だからこそ誇って欲しいと。

 

それは成長の中で見逃してきた大切なもの。それをもう一度見つめ直し、創路の中で何かが変わり出していくのである。

 

この作品はいちゃラブコメである。同時に一組の師弟が互いに影響を与え合い成長を遂げる成長の物語でもある。故に一読で二回美味しいのである。

 

成長ものなラブコメが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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