読書感想:異世界サ活 ~サウナでととのったらダンジョンだ!~

 

 さて、私事であるが私の弟はサウナ好きであり時々大学時代の友人とサウナに繰り出している訳であるが、私自身はサウナは未経験である。別に特に嫌いでもないが行く機会が無かっただけであるが。それはともかく、サウナというのは人によって好き嫌いが分かれるものかもしれない。しかし、体を内から熱するのと急激に冷やす事で、所謂「ととのった」という状態まで身体を持っていくのが好き、という読者様も画面の前にはおられるかもしれない。

 

 

だが、私の知る限りラノベでサウナ、というものが題材になったことは無い。何故なのであろうか。そんな事情はともかく、今作品ではそのサウナというものが舞台装置として存分に使われているのである。

 

自動車メーカーに開発部門のチーフとして勤務する男、高虎(表紙左)。三十歳であり、足が不自由な妹、伊予と暮らす以外はごく普通の男。そんな彼の趣味は、自宅に設置されたサウナで汗を流す事。

 

 しかし彼はサウナが好きすぎて、サウナの中では指示厨へと変貌する厄介な一面を持っていた。そんな彼はある日、サウナストーンの中に何故か異世界の魔石が二つ混ざっており、その魔石の力で異世界へと転移を果たす。サウナの中に突如姿を現した異世界の女騎士、ベル(表紙中央)。彼女と出逢った事で、高虎にとっての天国が幕を開けるのである。

 

「とにかく俺についてこい。お前に本物の快楽を教えてやる」

 

指示厨な高虎と、「尽くしマゾ」という特殊性癖なベル。二人の変態が噛み合う時、化学反応が起きてしまう。正に割れ鍋に綴じ蓋、となる。

 

更にはこの異世界のダンジョンは基本的に死んでも、自身にとって落ち着く場所へリスポーンするという性質を持っており。更に言えば、二つの魔石のうちの一つの力でタイムラグなく元の世界へと帰還でき。もっと言えばこの世界には「賢者の石」という伊予の足を治療できるかもしれぬと言うアイテムの噂がある。

 

そんなものがあるのなら、この世界で冒険しないわけにはいかぬ。しかし一般人である高虎に何ができるのか? 否、一先ず彼には何も出来ずとも、サウナには出来る。魔石をサウナストーンとして用いる事で、様々なバフを得られると言う恩恵が何故かサウナにはあったのである。

 

ならば立ち止まるわけにはいかぬ。早速ベルとコンビを組み、会った事もないダンジョンの創造主に劣情を抱くノーム、ピィレーベや不幸を齎すと言う自身の種族の噂を覆す為に頑張る銀狐族の少女、エウフェリアといった仲間を加え。ダンジョンを舞台に冒険が始まる。

 

ある時はガーゴイル相手に死を迎えたり。採掘した魔石の効果が分からず手当たり次第に使ってみれば、デバフの嵐に大混乱になったり。更にある時は、サウナハットを創る為に可愛い魔物を捕らえて、危うく高虎がその可愛さに落ちかけたり。

 

彼を潤滑剤としてパーティは纏まり、まだ見ぬダンジョンの最果てを目指して探索が進む。その中で現れる、創造主の手下。コメディリリーフと名乗る優男風な謎の敵は、ドラゴンを彼等の前に出現させその場を去っていく。

 

さて、サウナによるバフもなく、戦力差は圧倒的。ここから勝つにはどうすればいいのか。

 

「「「「ととのえば、勝てるッ!」」」」

 

 そのカギを握るのもやはりサウナ。この空間自体をサウナに変えてしまおうと言う突拍子もない提案。その提案に賭けシフトを組みながら場を整え。最後は全員で瞳孔を開ききってドラゴンへと立ち向かっていくのである。

 

癖の強い者達による怒涛なコメディの中、サウナに関するあれこれが分かるこの物語。コメディとして面白く、正に整うようなものである。

 

唯一無二の笑いを見てみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

異世界サ活 ~サウナでととのったらダンジョンだ!~ (ダッシュエックス文庫) | 持崎 湯葉, かれい |本 | 通販 | Amazon