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読書感想:陰キャだった俺の青春リベンジ 天使すぎるあの娘と歩むReライフ - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は、ラブコメ的に主人公が何れ乗り切らなければならぬイベントと聞くと何を連想されるであろうか。告白、ファーストキス、すれ違い。様々あるであろう。だが「ヒロインの実家への挨拶」というのも何れ乗り切らねばならぬイベントである筈だ。電撃文庫の某作品のように、いわばラスボス戦と言っても過言ではないイベントなのである。
しかし、画面の前の読者の皆様も何となくお察しではないだろうか。ブラック企業において培われた精神力を引き継ぐ心一郎が、大抵のイベントに心動揺させる事があるのだろうか? という事を。
そう、家柄云々よりも重要なもの。人間としての「格」。生きる上で大切なそれを持っていると言う事が存分に示されるのが今巻なのである。
文化祭を社畜的スキルで乗り切り、迎える期末テストの季節。周りが不安に揺れる中、心一郎に不躾な声をかけてくる無粋な少年が一人。その名は御剣。春華に一方的な執着心を抱く一方的な幼なじみであり、間男にもなれぬ無粋者な俺様系イケメンである。
期末テストの結果に春華の身柄を賭けて一方的に勝負を挑まれ。当然挑まれてやる義理は無いけれど、それでも春華の為には放置するという事も出来ず。何の益もない勝負を受け入れ、心一郎は社畜のスキルを活かし春華と共に勉強会をしながらも自分を高めていく。
「教えてやろうか? 何故も何も、そもそも前提が違うんだよ」
無粋な愚者に負けぬ愚か者ではない。自分の努力と言う結果で御剣を打ちのめし、更には春華も強い拒絶を以てトドメを刺し。あっという間に終わった期末テストの先、だがここからが本番である。日頃のお礼にと春華に家へ招かれ、挙句の果てに父親である時宗と母親である秋子と会う事になってしまったのである。
秋子の方は歓迎ムード、しかし時宗の方は臨戦態勢。強大なプレッシャーと共に覚悟の有無を問いかけてくる時宗。
「その通りです。俺は春華さんが本気で好きです」
けれど、ここで退くのはあり得ない。既に胸にあるのは不退転の気持ち、これだけは譲れない。だからこそ心一郎は真っ直ぐな思いと綿密な計画による将来計画を明かし。時宗にその覚悟を見せつけ、関係性を一先ず認めさせることに成功する。
「新浜君は私の毎日にキラキラをくれてばかりです」
そんな彼に影響を受けるかのように、春華もまた変わりだす。胸に宿ったその気持ちに導かれるように、開花の時を迎えていく。
更に面白さを増し、ラブコメとしても深淵に踏み込んでいく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。