読書感想:武装メイドに魔法は要らない

f:id:yuukimasiro:20210314222648j:plain

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は銃火器をぶっ放してみたいという欲望に駆られた事はあられるであろうか。むしゃくしゃしたり色々な理由で、銃火器をぶっ放してみたいと思った事はあられるだろうか。

 

銃火器は燃えるもの、メイドさんは萌えるもの。ではその二つが合わさったら一体どうなってしまうのか? その答えは、この作品の中に全て詰まっている。

 

誰かに仕えたかった。誰かのために戦いたかった。そんな願いを抱いていた少女、マリナ(表紙)。漫画に出てくる登場人物に憧れるような、何処か純粋な女の子。

 

 だがしかし、彼女は分断され争い合う日本で戦う民兵であり、敵の襲撃により今まさに死にかけていた女の子だ。死の間際、せめて漫画の表紙を目に焼き付けようとした彼女の意識は消えた筈だった。が、しかし。彼女が次に目を覚ました場所は異世界であった。

 

ゴーレムという新たな肉体へと魂を定着させる形で彼女を呼び出した少女、その名はエリザベート。父を戦争で亡くし、一人で辺境領を治めながらも策略により、全てを奪われんとしている少女である。

 

「わたし、マリナさんには・・・・・・夢を叶えて、欲しかったの」

 

魔獣による襲撃で傷を負いながらも、彼女はマリナへ願いを口にする。

 

「ま、死に様としては及第点ってとこか」

 

その願いは、彼女にある意味の「納得」を抱かせ。契約は結ばれ、マリナが望んだ力、「武装メイド」の力は目を覚ます。

 

マリナが手に入れた力、それはスカートの中から自分がイメージした銃火器を取り出す、ただそれだけの力。魔術が幅を利かせるこの世界で、その力はあまりにも異端。

 

だが、その力こそ異世界で立派に通用する最強の力であった。

 

「わたくしはバラスタイン家の―――武装戦闘メイドでございます」

 

対物ライフルから始まり様々な銃器から放つ弾丸は、異世界の騎士達の肉体を容易く肉塊へと変え、けれどやはりここは魔法の世界。銃器だけでは勝てぬ相手が確かに存在する。

 

だが、マリナは負けないと言わんばかりに凶悪に笑い、負けると分かっていてもその身を戦場に踊らせる。

 

「オレはそんな”業突く張り”に仕えて、ソイツのために戦うのが夢だった。言うなればオレは”エリザの望みを叶えるお遊戯”がしたいんだよ」

 

それは何故か。エリザという最高の使えるべき主を見つけたから。自分を使い潰してくれる、最高の利己主義者の本質をエリザの中に見出したから。

 

大小無数の銃火器が戦場で火を噴き、敵も味方も血塗れで痛々しい戦いが繰り広げられるこの作品。

 

だが、だからこそ面白い。好き勝手に、己の欲望のままに二人の利己主義者が暴れ回っている。故にこそ突き抜けるような、一種の爽快感のある面白さがあるのである。

 

鉄火場が大好きという読者の皆様、メイドと銃火器が好きな読者の皆様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

武装メイドに魔法は要らない (ファンタジア文庫) | 忍野 佐輔, 大熊 まい |本 | 通販 | Amazon