読書感想:Vのガワの裏ガワ2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:Vのガワの裏ガワ1 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、Vtuberという存在を通じ青春を描いていくこちらの作品。時にぶつかり合うのも青春である。恋が芽生えるのも青春である。青春とは様々な形があれど、明確な正解というものはないのかもしれない。そして、「挫折」というのも青春の一つの要素と言える。今巻はそんな挫折と再起の巻であり、それを担うのが千景や果澪たちの後輩である生徒会の一員、夕莉(表紙)である。

 

 

学校の空き教室でこっそりと戦略会議をしていたところ彼女に追い出され、果澪の忘れ物を取りに夜の学校に向かったところ、何故かアイドル衣装で歌う彼女に遭遇する、という突発的なイベントも巻き起こり。そんな中、千景は果澪の意思を聞き、彼女に合う事務所を探して知人である花峰が経営する事務所の門を叩く。

 

「だから、俺を利用すると」

 

 しかしその場で請われたのは、夕莉ことアイドルVtuber「金剛ナナセ」のマネージャーを期間限定でやってほしいというもの。そも、普通に考えれば千景にメリットは一つもない。そもそも業務内容からして専門外である。だがそれは巡れば果澪の為になると判断し、千景は夕莉と契約を結ぶ事となる。

 

夏休み中に登録者数十万人。その目標を掲げる夕莉。しかし彼女は、コラボ配信の提案を一蹴したりと千景が考えた案を悉く却下し、自分の力だけで目標を達成させる事に拘る。

 

「あってもなくても、それがプロの世界です」

 

 何故彼女はそんなにも、己の力だけに拘るのか。それはかつて、本当に芸能事務所に所属しアイドルの卵をやっていたから。彼女は秀才であった、確かに。だが天才ではなかった、花が無かった。故に心無い言葉に心折れ、それでも新たな世界に夢を求めていたのだ。諦めたくないと夢を追い求め、持たざる者なりに足掻いていたのである。

 

「・・・・・・最後にもう一度、世良の言葉で聞かせてくれよ」

 

聞き求めるのはその本心、その願いを叶えるのはきっと一人ではいけない。己のプライドも大切だ。けれど、プライドを折らずとも歩める道はある。共に並び立たんとする気概があれば道は開けるのである。

 

「善人は、何かを選ぶのが苦手なんだ」

 

「亜鳥くんと、二人で来たかった?」

 

その裏、指摘されるのは千景の底抜けの善性。それは確かにいいものだ、けれど時には危ういものだ。実際、彼は相手の事を考えすぎる、目の前の相手の事を。だからこそ見えていない所は中々気付けない。彼の知らぬ裏、チームの中でそれぞれの思いが廻り出している事に。

 

また違った青春の形が描かれる中、恋が芽生え始める今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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