読書感想:女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話5

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前巻感想はこちら↓

読書感想:女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話4 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、落とし落とされ嵌り嵌り合い。巻数を重ねるごとにお互いに更に惚れていき、気が付けば鉄板カップルと化してきている絢と鞠佳であるが、これ以上何を深まる要素があるのか、と画面の前の読者の皆様はお思いではないだろうか。しかし安心してほしい。まだまだ深まる要素は存在しているので。

 

 

そもそも、鞠佳の母親や親友等、二人の関係を知っている面子は少しずつ増えつつあるも、鞠佳の父親や普通の級友等を始め、まだ二人の関係を知らぬ者達も多い。

 

 明かせぬからこそ辛いものがあり、けれど明かせぬ事情もあり。そんな二人へ訪れるのは春の嵐。新たな季節の始まりの風である。

 

三年生となり、進路を本格的に考え始める時期になり。絢と結婚式を挙げると言うのをぼんやりと意識したり、とイツメンと再び同じとなれたクラスで思い悩む鞠佳。

 

そんな中、新たに旧友となった柚姫という少女に二人の関係は振り回され、これ以上掻き回されるのも嫌だけれど、明かすのもレッテルを貼られる事に他ならぬと板挟みになる中、新たな波乱はやってくる。

 

 しかし、それは悩む鞠佳の背を押し変化を齎す鍵ともなる。後輩となったアスタロッテより齎されたのは、可憐のお店の危機。十年来の想い人との旅行を自身の店を理由に諦めようとする彼女の背を押す為、鞠佳はピンチヒッターとして十日ばかり、絢と同じバイトをする事を決意する。

 

新宿と言う夜の蝶が数多羽ばたく世界、その片隅に確かに存在する女性を愛する女性が集う世界。そんな世界で新しく発見する、バイト中の絢という惚れ直してしまう要素。

 

同時に新たに出会う、絢のバイト先の先輩。大人と言う自分よりも多く社会と接し、女同士の世界に付き合ってきた者達。曲者揃いで翻弄され、大人だからこその価値観に触れ。絢の気持ちの誤解からのすれ違いと言った可愛らしいトラブルもありながらも、鞠佳は潜り抜けていく。

 

『できなくてもいいと思うんだけどね、わたしは』

 

『いい女ってのはね、強い女なんだから』

 

背を押すのは先人である可憐の優しい独り言による励まし。気付くのは、自分が如何に空回っていたのかと言う事と、とっくに見つけていた自分だけの「楽園」の再認識。

 

「あたし、絢と付き合ってるから」

 

 その励ましを背に、絢の為に。鞠佳は自分の殻を破り恐れずに一歩。カミングアウトという手札を切って見せる。

 

成長と深まり、まだまだ面白くなると言わんばかりにどんどんと突き進んでいく今巻。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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