読書感想:好きな人がバレたら死ぬラブコメ 俺を好きじゃないはずの彼女が全力で惚れさせようとしてくる

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 さて、「ラブコメ×ゲーム」と聞くと、先月MF文庫Jより刊行されたとある作品を思い出す読者様もおられるかもしれないが、先に申しておくとこの作品は上述した作品とは全く違う、とだけ申しておこう。スキルもないし、賭けるのは記憶ではない。では一体何を賭けるのか。それは己の「退学」であるのが今作品である。

 

 

幼い頃、恋心を抱え言い出す事が出来ずに。再会の約束を交わし、離ればなれとなった幼馴染同士である少年と少女。少年の名前を夏海(表紙左)、少女の名前を春香(表紙右)。 天才同士な二人は高校入学を切っ掛けに、次世代を担う天才を養成する機関、「覇王学園」で運命的な再会を果たす。

 

 普通のラブコメであれば、ここで告白し付き合いだすという展開もあり得たかもしれない。しかし、そんな展開を阻むものがあった。それは今年度から「覇王学園」に導入された新たな必修科目、「恋愛学」である。

 

一カ月ごとに赤点を取ったら退学、好きな人がバレても退学。但し一位を取れば、交際を義務とする告白が出来る等の様々な恩恵があり。そして点数を稼ぐ手段は、課題をこなし異性をドキドキとさせる事のみ。

 

 何を言っているんだと思われるかもしれぬが、これが事実なのである。そして、そんな状況の中でひょんな事から夏海と春香はお互い別の好きな人がいると勘違いしてしまい。一位を取って告白する為、恋愛ゲームへと挑むことになってしまうのである。

 

まずは連絡先の交換から始まり、手を繋ぐ、一緒にお昼ご飯を食べる等、ラブコメとしては定番のイベント、それを点数を賭けた課題の元に行うからこそ、何処か探り合うように緊張感をもって。お互いの心に気付かず、ぽんこつな心で高度な心理戦を繰り広げながら。不器用に夏海と春香は、お互いへと手を伸ばす。

 

しかし、唐突に波乱は訪れる。クラスのお嬢様、麗華に好きな人を知られた事を切っ掛けに、退学の危機へと追い込まれる夏海。どうすれば良いのか、もう時間は無い。

 

 それをひっくり返す鍵となるのは、点数の判断基準。そこを解き明かし、己の鼓動すらも偽る事で。全校生徒の目の前で、夏海は麗華の策を真正面から打ち破って見せる。

 

放っておけば、麗華は退学となる。それはライバルの脱落、歓迎すべき状況。しかし夏海は、敢えて特権を使って麗華の退学を阻止して見せる。

 

「信じてるからだよ」

 

それは、彼女を信じているから。彼女の中に自分と同じ匂いを感じ取っているから。そして、あの日春香から貰った熱に相応しき自分でありたかったから、あの日貰った熱と光を誰かにも渡したいと願ったから。

 

ゲームの名の元に策謀し、ぽんこつにすれ違いながらもドタバタなラブコメを繰り広げる。

 

故にこの作品は、普通のラブコメとは一風違う面白さがあり。新しい味のあるラブコメとして仕上がっているのである。

 

今までとは違うラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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