読書感想:初恋だった同級生が家族になってから、幼馴染がやけに甘えてくる

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 さて、最近ラノベのラブコメ界の作品を読んでいてふと思った次第であるが、最近、どうにも禁断の関係が絡むラブコメが増えている気がするのは私だけだろうか。実は結ばれない、という関係が判明してから始まるラブコメ、というのも増えている気がするが、画面の前の読者の皆様はどう思われるだろうか。

 

 

禁断の関係、そこに伴うものとは何であろうか。それは「切なさ」ではないだろうか。決して結ばれぬ、故に恋破れる。そこに付随する切なさこそが、そういうラブコメにおいての魅力と言えるのではないだろうか。

 

 さて、一体なぜこんな前説になっているのかそろそろ言ってしまうと、もう皆様もお察しであろう。つまりはそういう事である。

 

才色兼備な生徒会長で、「向日葵の女神」との異名を持つ同級生、日向(表紙)。そんな彼女に淡い初恋の情を寄せる少年、悠人。しかし、ある日。彼の初恋は、誰しもが予想しえなかった形で終わりを告げる事になる。父親から告げられた、自分と日向は異母姉弟であるという自分ではどうしようもない理由によって。

 

「おかえり。ご飯なら出来てるから、一緒に食べよ?」

 

そして唐突に始まる、ほぼ家出のような形で家を飛び出してきた日向との同居生活。初恋を唐突に打ち切られ、「家族」として始まる新しい生活。

 

「好き、です―――ずっと前から、あなたが好きでした」

 

「覚悟してね? 悠人が日向さんのこと忘れるまで、たくさん甘えるから」

 

そんな中、唐突へ悠人に告白する影が一つ。その影の主の名は月乃。クールなキャラで「月の天使」と呼ばれる少女であり、実際は悠人がいないと何もできないぽんこつな幼馴染である。

 

 そして始まる、初恋三角関係。初恋だった日向と家族として送る、何気ない日常。そして攻勢を強めどんどんと迫ってくる月乃との、ドキドキに溢れた刺激的な日常。二つの日常の狭間で、三人の思いが巡っていく。

 

悠人の終われない初恋、日向が秘めた悠人への思い、そして月乃の悠人への長年温めた初恋から続く恋心。

 

どうしても踏み出せなくて、尻込みしてしまって。どうしても揺れる恋心、それを頑張って押さえつけようとして、時々抑えきれなくなりそうになって。

 

関係性の変化、その中で揺れ動く想い。それが切ない感情の動きを醸し出し、心突き刺してくるこの作品。その変化の中、揺れ動く感情が、等身大の感情が、その動きに戸惑いそれでももがく悠人たちが愛おしくみえたのなら。きっと画面の前の読者の皆様もこの作品の魅力に嵌りこんでしまっている筈である。

 

初恋三角関係の恋の花、それは日向に咲く花となるのか、それとも月に揺れる花となるのだろうか。

 

切ない心情が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

初恋だった同級生が家族になってから、幼馴染がやけに甘えてくる (講談社ラノベ文庫) | 弥生 志郎, むにんしき |本 | 通販 | Amazon