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読書感想:わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)3 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれた読者様がこの巻の感想を読まれていると言う前提の元にここからの感想を書いていきたいわけであるが、皆様は前巻の最後、紫陽花さんの告白と言う衝撃の展開は無論覚えておいでであろう。ここから全てが変わり出す、という予感も覚えておいでであろう。しかし、何かお忘れではないだろうか?
忘れているのは何か。それは我等が主人公、れな子の事だ。少し彼女をフラットな目で見て考えてみてほしい。元陰キャであり、普通の女の子である彼女が、真唯と紫陽花という「特別」な美少女二人からの告白を受け止めきれるのだろうか、という事を。
「じかんを・・・・・・くれませんか・・・・・・?」
紫陽花さんからの告白の返事を保留してしまい、一週間。だが答えを出す事は出来ず、更には真唯との語らいの中で自分自身の本性、ただ「好かれたい」のではなく「嫌われたくない」だけの面倒な本性を理解してしまい、息のできなくなるれな子。しかし妹の遥奈のスパルタな一手によりまた学校へ送り出され、否応なく彼女達と向き合う事になる。
「―――仲直りの証に、手伝ってほしいことがあるんだけどにゃあ」
そんな彼女へと、声をかけてきたのは友達グループ最後の一人、香穂。すれ違いとぶつかり合いからの和解の為、何よりある目的の為。れな子は香穂の趣味、コスプレに付き合う事になり撮影会からイベントまで振り回される事になる。
だが、それこそが大切な事だった。実はれな子と意外な接点のあった香穂の昔話。かつてある少女に憧れたと言う過去、何故自分自身までも演じるのかという話。それは何も持たなかった一人の少女が、「特別」への「好き」を胸に邁進してきたと言う証。
「好きだから。その気持ちを、裏切りたくない」
その思いを受け、れな子は気付く。卑屈な闇ばかりだった彼女の心の中、確かに芽生えていた新しい感情の光に。大好きだからこそ、裏切りたくないという思い。
「私は嫌われるのが、怖いんだ」
その思いを向ける相手は紫陽花だけではない。己の心の醜い部分、面倒な部分を人知れず晒す真唯だって、大切だ。だけど大切なものは、一つしか選べない。
「わたし、紫陽花さんと付き合うね」
「そして、真唯とも付き合う!」
―――否、果たして本当にそうなのか? 本当に、二つとも大切なものを一つ、手放してもいいのか? 毅然と、弱くも確かな変化した心を胸に。真唯のステージを自身のステージへと塗り替え。れな子は毅然と、自身の選択を告げる。二兎を追う者は一兎をも得ず、それを否定する答えを。「普通」という選択肢をかなぐり捨てた、自分だけの答えを。
「どうするんだい、君は、これから」
「がんばる」
例え浮気者と呼ばれても、二人分苦労するとしても、何にも分かっていなくとも、具体的に何も見えていなくとも。それでもれな子は選んだ、二人の事を。
紗月から強さを、紫陽花さんから優しさを、香穂から正直さを、そして真唯から輝きを。
自分の周りの「特別」から大切なものを受け取り、今、新しい自分へと手を伸ばす。過去に囚われていた自分から一歩踏み出して。
今、まさにれな子という色のない蕾は開花の時を迎えた。そして今、彼女は正に真の意味で「主人公」になったのだ。真唯達の脇役ではなく、彼女達と並ぶ主役へと。まだまだ未熟だけれど、一歩踏み出して見せたのだ。
香穂の洗脳ASMRでれな子が壊れたりというコメディ感、三人でデートという一幕の甘さ。
そんな中、「全ての女の子を幸せにする」というガールズラブコメの真髄、真骨頂が炸裂する今巻。
この圧倒的な感動、是非画面の前の読者の皆様も味わってみてほしい次第である。
わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) 4 (ダッシュエックス文庫) | みかみてれん, 竹嶋 えく |本 | 通販 | Amazon