読書感想:モブしか勝たん! お前らが俺にデレデレなお嫁さんになるって本当なの?

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主人公がいて、ヒロインがいて、親友キャラがいて。ラブコメの王道的人間関係と言えばそんな関係が思い浮かぶ画面の前の読者の皆様もおられるだろう。しかし、それだけで人間関係が纏まる筈もない。それだけで世界が終わる筈もない。

 

それもまた当然の事であろう。それだけではあまりにも少人数学級過ぎる。では何が足りないのか。足りないのは「モブ」と呼ばれる存在であろう。

 

「モブ」、それは主人公とヒロインがラブコメしたり主人公と親友キャラがバカやってる近くに存在している日の当たらぬ存在。だが、言わば舞台装置とでも言えるそんな存在達も、作品上で確かに生きている存在である。そして彼等にだって、彼等だけの青春が確かに存在しているのである。

 

VRアプリケーション、ドリームトラベル。通称、ドリトラ。それは正に望んだ夢を見せてくれる魔法のアプリ、の筈であった。

 

が、しかし。そのアプリを使って異世界無双の夢を見ようとした少年、海翔が見たのは全く以て無関係の夢。何故か自分が、超好みのタイプである未来の嫁(表紙中央)と結婚生活を送っているという、あまりにもリアルに過ぎる夢であったのだ。

 

一体どういう事なのか? そんな事を思い悩む間もなく、海翔は未来の嫁から自分達が仲良くなったきっかけを告げられる。それは、廃校騒動を二人で乗り越えた、というかけがえのない経験。

 

 その言葉の通り、廃校騒動はいきなり持ち上がり、未来の嫁を探すため、海翔は廃校阻止に立ち上がる。そんな彼の仲間となった少女は二人。周りに合わせるだけのミーハー少女、蘭(表紙右)。クラスでも一人過ごすオーラの薄い少女、陽彩(表紙左)である。

 

どう見てもモブ、自分と同じく主人公にはなり切れぬ存在。未来の嫁とは全く似ていない二人に戸惑いながらも、海翔は行き当たりばったりに廃校騒動へと挑んでいく。

 

 だが、忘れてはならぬ。彼等はモブである。主人公にはなりきれぬ存在である。そして普通の主人公と同じように、どこまでいっても何の力もない子供である。

 

デートを兼ね募金活動に精を出し咎められ、廃校阻止をかけ挑んだグルメフェスティバルでは掴んだ成果が要らないやっかみを齎し。

 

何も悪い事はしていない、けれどまるで出る杭は打たれると言わんばかりに押さえつけられ、心の中の炎を消し去られそうになり。

 

「だからさ、木下。悪いけど、もう一度だけ俺の我が儘に付き合ってくれないか・・・・・・?」

 

 だがそれでも、諦めきれない。未来の嫁と出会いたいから、だけじゃない。もうそれだけじゃない。守りたいものが出来たから。例え試行錯誤だとしても、何かできる事があると信じているから。

 

劣等感故の反発が齎す熱さ、そしてモブの取るに足らぬ力が齎す一つの結果が爽快感を齎してくれるこの作品。

 

一種の熱さがあるのがこの作品であり、それ故にこその面白さがあるのである。

 

 だが、これもまた忘れてはいけない。未来なんて不確定、小さな行動でいくらでも未来が切り替わるのだ。まるでバタフライエフェクトのように。

 

一種の熱さが好きな読者様、只のラブコメには飽きた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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