読書感想:レベルリセット ~ゴミスキルだと勘違いしたけれど実はとんでもないチートスキルだった~

f:id:yuukimasiro:20210523233400j:plain

 さて、一般的にリセットと呼ばれる行為は一体どんな印象であると画面の前の読者の皆様は思われるだろうか。リセット、それは文字通り全てを無に帰す事である。例えばゲームなんかにおいては、初めに願った結果を掴み取るまで、そこに至るまでに何度もリセットする、という事もあり得るかもしれない。

 

 

だが、それがレベルが生活に直結するような世界であったらどうなってしまうだろうか。例えばレベルが重要になる世界であったら、リセットと言う行いは如何なるデメリットを持ってしまうのであろうか。

 

スキルクリスタルと呼ばれる、人にスキルを与えるクリスタルが存在するとある異世界。かの世界に一人の少年がいた。彼の名前はラグナス(表紙中央)。人よりレベルアップするのが早く、早熟の天才として、あるいは神童として既に名を馳せている少年である。

 

 このままいけば、このまま何か凄いスキルを授かる事が出来れば。彼の未来はいばらの道にはならなかっただろうし、この作品はストレスフリーの無双譚にでもなっていかたもしれない。しかし、そうはならなかった。十歳となり臨んだスキル開花式、彼に宿ったスキルは「レベルリセット」という見知らぬスキルだったのである。

 

一日の終わりと共にその日得た成果がリセットされ、レベル一に巻き戻ってしまうという、普通に見ればどう考えても何の意味があるのかと言わんばかりのゴミスキル、そうは見えても仕方のないかもしれない。事実、その日からラグナスは世界に見放された。そう言わんばかりに、全ての自分を知る者達から嘲笑され、彼は家を出奔することを決める。

 

 だが、役に立たぬゴミスキルと一生付き合っていかなければいけない憂鬱を抱えながら始まった旅の中、ラグナスは気付く。このスキル、考えようによっては実は可能性の塊なのではないか、と。

 

謎の者達に追われる謎の少女、ニナ(表紙右)を救い、人を信用できぬという彼女の奴隷となり。旅の中、長き時を生きるスキルを知る吸血鬼、スカーレット(表紙左上)と出会い。

 

 彼は知る事になる。「レベルリセット」というこのゴミみたいなスキルは、実は最強のスキルを手に入れる為に必要な鍵である事を。このスキルを持っていたとしても、得られるものがあるという事を。

 

名を偽り、冒険者として活動を始めた二人の前に立ち塞がるのは暴走した獣やニナを追う精鋭の剣士といった強敵揃い。

 

 だけど、立ち塞がるのが強敵ばかりだとしても。それでも負けられぬ理由がある、だから何度でも立ち上がる。

 

「最後まで、あなたが私の味方でいてくれたからです」

 

戦いの中、ニナとラグナスの心の距離は近づいていく。そして二人は、契約を越え真の意味での絆で繋がっていく。

 

 この作品は、痛みと苦しみに満ちている。だがそんな中でも諦めず、己の願いの為に必死に戦う子供達のお話なのである。

 

だからこそ、何処か鮮烈な面白さがあるのは確かと言えるかもしれない。

 

簡単にはいかぬ作品が好きな読者様、大きな枠組みの作品が好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

レベルリセット ~ゴミスキルだと勘違いしたけれど実はとんでもないチートスキルだった~ (ダッシュエックス文庫) | 雷舞 蛇尾, さかなへん |本 | 通販 | Amazon