読書感想:ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様の中でこれから就活に挑まれると言う読者の方はどれほどおられるだろうか。これから就活という方は、是非とも頑張っていただきたい。が、社会人の先達としてこれだけはお伝えさせていただきたい。求人票に出されている条件だけが全てではないと言う事を忘れないでいただきたい。幾ら美麗字句を求人票に並べていたとしても、実際にその会社に入社しなければ見えないものもあるのである。

 

かつて高度文明の国を築き、「神の国」なんて呼ばれるほどに発展しながらも突然の滅びを迎え、今は再び人間の街を築いた冒険者達と魔物達が相争う、とある異世界のヘルカシアと呼ばれる大陸。

 

「遺物」と呼ばれる先人達が遺した道具を時に探し、時にダンジョンを探索する冒険者達。

 

その冒険者達を統括するギルドの受付嬢、アリナ(表紙右)。「処刑人」とも呼ばれる巨大な戦鎚を使いこなす謎の冒険者としての裏の顔を持つ彼女は今、怒りに打ち震えていた。その理由は簡単。ダンジョンのボスが討伐されないせいで残業が終わらないからである。

 

超安全、安心安定なんて何処にもなく。昼は曲者だらけの冒険者の対応に追われ、夜は夜で残業に追われる。かのボスをぶちのめさなければ、自分に平穏なんて訪れはしない。

 

 が、しかし。しびれを切らしてボスをぶちのめしたら彼女の正体は一人の冒険者にあっけなく判明する。その名はジェイド(表紙左)。ギルド最強のパーティの盾役を務める実力者の青年である。

 

「私は受付嬢として平穏に暮らしたいだけなの」

 

そう言い何度突き放しても彼はやってきて。それどころか自宅の壊滅、そしてギルドの重鎮への正体露出というアクシデントを経て、アリナはジェイド達と共に未知なるダンジョンの探索へと出向く事になってしまう。

 

だが、かのダンジョンに出現した強敵、その名は「魔神」、旧文明を滅ぼしたもの。戦いたくない、なんて言うのは簡単で。実際、自分は戦う必要なんてなくて。

 

けれど、アリナはジェイドの危機を前に立ち止まる事は出来なかった。冒険者なんていつか死ぬ、過去に叩きつけられた事実に逃げる事は簡単だった。

 

「―――私の、”平穏”な日々にね、」

 

「”誰かが帰ってこない”なんてことは、もう起こらない。私が許さない」

 

だが、立ち止まれない。その心を突き動かすのは、あの日思い知った痛みと無謀な夢、その先に生まれた新たな夢。鬱陶しいけれど、ジェイドだって自らが望む「平穏」の一部。だからこそ失いたくない、もう痛みなんて御免だ。

 

だからこそ、残業を憎み有休を惜しみ。そして自らの平穏を壊さんとする敵をぶちのめす為に。彼女は雄々しく、戦い抜く。

 

王道だと笑いたければ笑えばよい。ありきたりだと言いたければ吠えれば良い。

 

だが、この作品からあふれ出る熱さは真っ直ぐ王道だ。そして、打てば響くようなコメディの中で、皆自身の想いを抱え必死に生きているからこそこの作品は面白いのだ。

 

王道な熱さと笑えるコメディが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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