さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は何か、これだけなら自分は誰にも負けないという自信のある特技はあられるであろうか。誰にも負けたくない、自分自身が一番でありたい特技はあられるであろうか。
一見すると普通の高校生に見える少女、早來(表紙)。だが彼は普通の少女ではなかった。
彼女につけられた渾名は、「史上最強のアマチュア」。インドア、アウトドア関わらず何をやらせても即戦力どころかプロ級。だが彼女に言わせれば只の趣味。そんな怪物が如き渾名を持つのが彼女である。
そんな彼女が最近熱中しているのは学園に蔓延る謎の真実へと迫る謎解き。そのお供として選ばれてしまったのは、小説家を志す普通の少年、壱時(早來が持つ写真の中の少年)。
一見すると何の共通点も無さそうな凸凹コンビなこの二人。だがこの二人には、他の人には内緒の共通点があった。それは、常識外の、まるで魔法のような力を持つ不思議な道具、「超理具」をそれぞれ所持していたという事である。
早來が持つのは「運命カメラ」。何故か喋れて意思疎通が出来ると言う不思議な特性を持つ、撮影した場所の三日後までに起きる未来の光景を写せるカメラ。
壱時が所持しているのは「懐旧時計」。蓋を開ければ、蓋が自動的に閉まるまでの三分間使用不可という欠点を持つが、記憶を持ち越したまま三分前に戻れるという懐中時計。
そう、まるでミステリーの前提を壊し理不尽で非合理的な解決を導くことも出来る不思議な道具。だがしかし、事件を引き起こすのもまた、「超理具」の力が絡む事件である。
「それは遠回しに自虐していると捉えて良いのか?」
「なぜ私の胸を見ながら言う。誰が頑丈な鉄壁ですか! ちゃんと柔らかいですよ!」
お互いに軽口を叩き合ったりからかいあったりしながら。何だかんだ嘆きながらも事件の解決へと乗り出していく壱時。
彼を待つのは、「超理具」を手に入れ歪んでしまった者達の歪んだ心。そしてその道具を齎した黒幕の、人知れず笑う悪辣な思惑。だがしかし、それでも壱時は進んでいく。大切な友達である早來を守る為に。
「メリットなんて・・・・・・あるに決まっているだろう・・・・・・!」
彼女と過ごした非日常は創作の参考になったから。楽しかったから。面白おかしかったから。何よりも失いたくないから。
「だって―――好きな人には、可愛いって思って欲しいじゃないですか」
だけど彼は未だ気付かない。早來が認めた彼だけの強さが自分の中にある事。そして彼女の本当の想い。
凸凹コンビが丁々発止をしながら謎へと迫る謎解き。不思議な力でぶつかり合うバトル。そして、犯人達の何処か歪んだ心。
そんなちょっと不思議でハラハラする面白さがあるのがこの作品である。
SFシリアスが好きな読者様、凸凹コンビが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
ナゾトキ女とモノカキ男。 未来を写すカメラと人体消失 (ファンタジア文庫) | 辻室 翔, うなさか |本 | 通販 | Amazon