さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は何か冤罪をなすりつけられた事はあられるであろうか。もしそんな経験があられるとしたら、貴方はどうその事態を乗り越えられてきただろうか。
とある異世界、物語として語られる百年前。当代最強の十二人の末席に名を連ねた最強の少年がいた。
だがしかし、そんな彼は脇目も振らぬ戦いの果て、宿敵の策謀により百年後の未来へと送られてしまう。しかも百年の後、彼の名声は歪められ、最悪の汚名として名を残されていたのだ。
そんな冤罪による大罪人となってしまった少年は、一人の軍人との出会いを経て彼女の軍門に下る事となってしまう。
最強の少年がそうも簡単に下った理由とは何か。それは借金返済の為という切なる理由。百年前に借りた金が、百年の時を経て利子が巡り巡ってとんでもない額となってしまっていたからである。
そんな彼は上官となった軍人、シリウスによりシエル(表紙中央)という新たな顔を手にいて、軍人であるレーヴェ(表紙左)をお供に、とある学園へと潜入する事を命じられる。
彼に課せられた任務は他国のお嬢様であるメルセデス(表紙右)にアプローチをし、こちら側へと引き入れる事。言わば美人局要員。
暗殺を生業としてきた彼に取っては経験のない、全く未知の任務。だがそんな任務が、彼に新たな日常を齎し彼の人生に新たな色を齎していく。
「学生をやるのも大変だ」
目立たないようにする筈が初日からやらかしてしまい注目を集め、メイドとなって共に潜入したレーヴェに呆れられたり。簡単な授業の中で驚くべき成果を出してしまったり。
「ありがとう、わたしのために学園に来てくれて」
更には、メルセデスに近づきすぎて肩入れしてしまい、結果的に潜入目的がバレてしまったり。
だが、そんな日々があるからこそ世界が変わっていく。その変化がシエルに「生きる」という事を実感させていく。しかし、平穏と共に来た変化は長くは続かない。メルセデスを狙う黒幕の策略が、容赦なく発動してしまう。
「オレを邪魔するやつは死ね」
その時、彼は学生の仮面、美人局の仮面を脱ぎ捨てる。では仮面の下の素顔とは何か。それは、かつての最強の一人。阻む者全てを切り捨てて屍山血河の果てに道を切り開いてきた、例え汚名で穢されようと変わらぬ最強の輝きを持つ者。
中々にシビアでハードな世界の中、それでも何も知らぬ新しい世界で懸命に「生きていく」。
そんな骨太な面白さがあるのがこの作品である。
軽快な掛け合いを楽しみたい読者様、人間臭い主人公を楽しみたい読者様にはお勧めしたい。
きっと貴方も満足できるはずである。
大罪烙印の魔剣使い ~歴史の闇に葬られた【最強】は、未来にてその名を轟かせる~ (ファンタジア文庫) | 東雲立風, ろるあ |本 | 通販 | Amazon