さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は心理学、と聞くとどんな作品を思い浮かべるであろうか。心理学、それは一見すると縁がないかもしれぬ学問である。だがしかし、その実は生かすことが出来れば日常生活でも役立つことが多い学問であるのかもしれない。
ブラック企業に勤めるも人としての輝きを失ってはいない、心配になるほどに極度のお人よしである青年、史樹。彼が自分の家である安アパートへ帰った時、自分の家の前で座り込んでいる見知らぬ少女と出会う。
彼女の名は穂春。元気で何処か悪戯っぽくて、だけど的確に人の心を示し当てる事のできる不思議なボクっ娘。彼女の正体、それは今を時めく五人組アイドルの「六人目」。「軍師」と呼ばれ、立身出世に多大な功績を齎した少女である。
一宿一飯の恩義に応えるべく、そして行き場を見失った自分の居場所となってもらう為。穂春は史樹の抱える悩みへと心理学的なアプローチを以て、解決への道筋を示して見せる。
彼女が繰り出す心理学、ハロー効果やアンダードッグ効果など史樹が聞いた事もないその考え方の数々は、間違いなく彼の力となり、彼を定時帰りへと導く力となる。
「ううん。一緒に帰るなんて、なんだかボクたち家族みたいじゃない?」
「みたい、じゃなくて、家族でしょ?」
そして、気付かぬ間に。いつの間にか。史樹は穂春へと初めての温もりを与えていく。それは何か。それは、実の家族との確執を持った彼女が今まで知らなかったもの。「どんな時でも無条件に味方になってくれる」人。それを世界は何と呼ぶのか。その答えは只一つ、それは「家族」だ。
二人の秘密の同居生活が危機に陥った時、穂春が零した小さくも切実な願い。
普通の女の子のように高校に行きたい、好きに生きてみたい。
そんな彼女の願いを叶えるべく、危機の元凶へと史樹は敢然と立ち向かい、穂春から学んだ心理学の知識を活かし、綱渡りの上での交渉へと挑む。
最近、時々、胸がドキドキしちゃって・・・・・・なんでだろう?
彼を見守る穂春の心の中に、気付かぬ間に芽生えていくのは恋の感情。それはきっと、大切な想い。
この作品の根底にあるもの、それは「家族」の絆。例え血のつながりが無くとも、偽物ではなく本物。互いがどちらかに寄り掛かるのではなく、お互いに並び立ち、共に同じ道を歩いていける者。そんな無条件に温かくて眩しく尊い、正に面白いという他ない作品なのである。
どうか末永く、この作品が続くと信じたい。
七条剛先生の作品のファンの読者様、家族の絆が溢れる作品が好きな読者様にはお勧めしたい。
きっと貴方も満足できるはずである。