さて突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は映画はお好きであろうか。もし映画がお好きであれば、貴方が好きなのは往年の映画だろうか、それとも最近の映画だろうか。
さる西暦二千年、一人の女優が事故死を遂げた。彼女の名は鶫（表紙右）。貧乏かつ裸一貫ながらも努力と実力で、屈指のホラー女優としてお茶の間を恐怖の渦に叩き込んだ実力派女優である。
その後、時は流れ現在、二千二十年。令和二年のこの世界で一人の傷ついた美少女、つぐみ（表紙中央）の中で鶫の心と記憶がよみがえった。
ではかつての記憶を取り戻し、全ての知識も取り戻した鶫ことつぐみは何を思ったか。その胸の中に宿った願いは只一つ。今度こそハリウッドへ。ただし今度もまたホラー女優として。
願いを決め歩き出す事を決意した彼女の元には何があるのか。それは言うなれば再び女優を目指すうえでの最高の環境。
今生は天涯孤独の貧乏ではなく、裕福で愛の深い両親がいて。前世では持っていなかった空前絶後の美貌すらある。
ではその天性の完璧な素材ともいえる原石に、前世で一から磨き上げた知識と経験が合わさると何が生まれるのか。敢えて言おう、怪物が生まれると。
見るものを圧倒しひれ伏せさせ、万人を魅了し傅かせる程の圧倒的な演技。
かと思えば、まだ五歳という年相応の子供の素顔を覗かせる。
正に天と地ほどのギャップの差と圧倒的な演技はあっという間に全ての人を虜にし、本人も知らぬ間にかつての好敵手や戦友たちの心にあの日の炎を灯させる。
その光に魅了されるかのように、つぐみの周りに集う女優の卵達。
クールに見えて人懐っこい凛。
面倒見がよいリーダー気質、珠里阿。
内気で心優しい美海。
つぐみに比べれば未熟に過ぎる、足元にも及ばぬまだ羽の生えたばかりの雛たち。だが、そんな彼女達へとつぐみは前を歩き後ろを振り返るのではなく、同じ目線で語り掛け、時に自らの行いで女優の道というものを示して見せる。
「では、もしもわたしからおかねやティアラをはぎとったとき、あなたはどんなことばをくれるの？」
スイッチを入れたのならば常在戦場、世界も目の前の役者も魅せて己の世界へ引きずり込む。まるで闇へと引き込む悪霊のように、夢の世界へと連れていく魔法使いのように。
演技の世界の描写は緻密に、まるで目の前で繰り広げられているかのよう。同年代の子供達とのふれあいは年相応に、可愛らしいという言葉が当てはまるように。
そう、この作品はスイッチが入った途端引き込まれるように魅力の高い面白さが炸裂する、正にこの作品の世界に引きずり込まれるレベルの高い面白さがある作品である。そして一人の少女が夢の舞台を目指して再び舞台に上がる、夢を追う熱さが光っている作品である。
私はこの作品に引き込まれた、では画面の前の読者の皆様ならどうであろうか。
その答えを是非、自身の目で確かめてみてほしい。
作品の世界に引き込まれてみたい読者様、総合的なレベルの高い面白さが楽しみたい読者様には是非読んでみてほしい。きっと満足できるはずである。
