読書感想:落ちこぼれ天才竜医と白衣のヒナたち

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は医者という職業に憧れた事はあるであろうか。かつて医療を取り扱った仮面ライダー仮面ライダーエグゼイドが放送されていたが、読者の皆様があのライダーをご存じであればどの医者ライダーが推しであっただろうか。

 

しかし、この作品は全ての医療に当てはまらない。それは何故か。何故ならば、既に表紙でも描かれているようにこの作品の医者が扱う患者はドラゴンだからである。

 

 

かつて、唐突に竜という存在が現れ人と危うい共存を保っている世界がある。だが七年前、かの世界は一度「竜災」と呼ばれる一件の医療ミスにより引き起こされた大災害に見舞われていた。

 

その医療ミスを引き起こしたとされる元天才竜医、若虎(表紙奥)。災害の跡地で孤独に暮らす彼の元に三人の竜の医者の卵が現れた事によりこの作品は幕を開ける。

 

失意に沈み後悔を抱える若虎を救う為に、旧知の友により預けられた三人の竜医のヒナである咲茉(表紙手前)、霞(表紙右)、明日羽(表紙奥一人手前)。

 

今はまだ未熟なヒナである彼女達が若虎の元、触れていくのは一筋縄ではいかぬ竜の治療。

 

火竜の火に火傷したり、鉄を食べてお腹を壊した竜を治療したり。

 

普通の治療の常識が通用しない竜の治療は、時に患者である竜の身体の一部を用いたり、時に命がけで身体全体を使って治療したり。

 

だが、彼女達は決して怯む事無く竜の治療へと挑んでいく。そんな未熟なれど今を必死に生きている若き光達が、枯れていた若虎の心に少しずつ炎を灯していく。

 

そしてまた繰り返されそうになる、再びの災厄の危機。その最中、若虎が知るのはあの日自らを守ってくれた竜の想い。

 

「・・・・・・たくさん、もらったよ」

 

―――今ここで、ひとつの命のために全てを投げうつより。

 

―――生き延びて、この先もっと沢山の命を救うべきだ。

 

そう、確かに竜は若虎の心の中に消えぬ傷を刻み込んでしまったのかもしれない。だが、絶望と同時に希望も与えていた。気付かなかっただけで、彼の中には生き抜いて他の同族の命を繋いでほしいという一匹の竜の未来へと繋ぐ希望の祈りが息づいていたのだ。

 

だからこそつなげた。だからこそ、もう一度医者として歩き出せる。

 

 

この作品はリアルな竜の治療という現実感に満ちた医療ドラマが繰り広げられる、医療ライトノベルである。そして同時に可愛い女の子達と竜のわちゃわちゃが賑やかで楽しい物語である。更に、繋がれた絆と願いが優しく心に温かさを齎してくれる、優しい温もりに溢れた作品である。

 

独特の温かさに触れたい読者様、可愛い女の子達を愛でたい読者様にはお勧めしたい。きっと満足できるはずである。

 

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