さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様に一つお聞きしたい。貴方はラブコメというジャンルの作品においてはハッピーエンド、バッドエンドどちらがお好みであろうか。ハッピーエンドが好きだという読者の皆様は今すぐこの記事の読書を見るのを止めて帰られたほうが良いかもしれない。何故ならこの作品は言うなればバッドエンドの作品だからである。しかしその終わり方は誰かが悪いわけではない。それは既に決められていた結末だったからである。
この作品の主人公、准汰(表紙奥)とヒロインである佳乃(表紙手前)は背中合わせに立っている。そう、背中合わせなのである。だからこそ隣に並び立てない。二人の道は擦れ違ったままである。それは何故なのか。
補習という学生にとっては憂鬱な場所で出会い、省エネと不器用という面倒くさい性格に阻まれながらも不器用に触れあい、恋にも似た感情を抱いていく二人。
だがしかし、佳乃は謎の奇病に苛まれ、准汰は彼女の無事を曰く付きの彗星へと祈る。
そして彗星は叶えた。彼と彼女は他人となり、生きる事が許された。両想い、だからこそ隣にいる事はできない。だから別の道を往く。でも、それだけでは救われない事を二人は知らずにいた。
今と違う設定で、もう一度出会いたかった。
願い事はただ一つ、それだけで良かった。あなたと一緒にいたかった。
不器用だからこそ生きづらくて、正直者こそ泣きを見て。そんな彼等に星が齎したのはもしもの可能性、儚い世界。
ここまで読んでいただけた画面の前の読者の皆様には分かっていただけただろうか。そう、齎されたのは奇跡ではなく「慰めの希望」。すぐ近くにあった本当の世界は変わらなかったのだ。
「泣けなくても・・・・・・笑えなくても良かったんだ」
後悔し涙すれど世界は変わらず、彗星が見せた優しい泡沫の夢は現実に塗りつぶされてゆく。
だけど、それでも。また奇跡を祈りたくなるんだ。もう一度、身勝手でもと。
そして、星降る夜になったら、その枕詞に続く彼の願い。
両想いだからこそすれ違い、希望は泡沫だからこそ哀しくて切なくて。だけど、確かにそこにあった希望は誰も覚えてなくても優しくて温かくて。
この作品を語るには私の陳腐な言葉では万の言葉を用いても語りつくせないかもしれない。だからこそどうか、画面の前の読者の皆様も頁を開いてこの味わい深い作品の
世界へ飛び込んでみてほしい。
きっと、貴方は忘れられない奇跡の目撃者となる筈である。