読書感想:矛盾が神を殺すまで1 ~その矛は世界を穿ち、その盾は神々を砕く~

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矛盾、それは中国の故事成語から来た諺。何でも貫く矛と何でも防ぐ盾。それが本当にぶつかり合ってしまったらどうなるのか。画面の前の読者の皆様はどう思われるだろうか。

 

とある王国に伝わる不思議な異能。全てを防ぐ力を盾に付与する「絶対防御」。全てを貫通する一撃を放つ「絶対貫通」。通常は同じ時代に集うことはない筈の二つの力が何の因果か同じ時代に集う。

 

そして更なる数奇な因果として付与されているのが、その矛盾する異能を扱う二人が恋人同士という事である。

 

生真面目一徹、どこまでも自らの正義を貫く盾の騎士、ザック。(表紙左)。清廉とした立ち振る舞いを見せながらも内面はぽんこつなミシェル(表紙右)

 

この二人が王より矛盾の果てを証明する事を命じられ、己の力をぶつけ合う事からこの作品は始まる。

 

矛盾が激突し唐突に失われるその力。栄誉の座が一転、追われることとなり王国を飛び出す二人。

 

その二人が遭遇するのは、今まで知らなかった世界の歪み。気付かなかった悪の存在である。

 

正義と悪、それもまた矛盾する存在。そして、お互いが存在するからこそお互いが存在できる。

 

「いったいどこからが悪で、どこからが善なんだろうな?」

 

問いかけられる、己の正義を揺らす矛盾の質問。

 

「ただ信じる道を進むだけだ」

 

対し、敢然と答えるのは改めて見つめる己の在り方。

 

この作品はこの一冊のみで評価するのは難しいかもしれない。だけど一つの大きな世の流れが始まる序章として捉えれば、様々な伏線をばらまく手法から見ると中々に心を期待で揺らしてくれる、大きな作品が読みたいのなら是非読んでみてほしい作品である。

 

王道の骨太なファンタジーが好きな読者様、一歩ずつ歩く道程が好きな読者様は是非。きっとお楽しみいただける筈である。

 

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