読書感想:青のアウトライン 天才の描く世界を凡人が塗りかえる方法

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 さて、画面の前の読者の皆様の中に青春と呼ばれる時間を何かに捧げた、もしくは現在進行形で何かに捧げていると言う読者様はおられるであろうか。そんな一瞬は今しかない、最高の一瞬である。何も考えず、駆け抜けていくべき時であるはずである。この作品はそんな一瞬を切り取った作品であり。「凡人」が己の力の限りを尽くし、一人の「天才」へと挑んでいく作品なのである。

 

 

幼少期、北の地で出会い親交を結び。しかし転校と言うどうしようもない事情により離ればなれとなってしまった三人の少年少女。宗佑、侑理、詩子の三人はいつか己の夢を叶え、又この地でという約束を交わし、それぞれの場所へと旅立っていく。

 

 しかし時が経ち高校生となった現在。己の夢の為に努力を重ねる詩子、侑理を越える画家となるという夢の為必死にもがく宗佑。その二人とは異なり侑理は絵を描く事を放棄する、という約束を破るかのような行動をとっていた。

 

同じ絵を描く仲間として侑理を何とか創作の場へ引っ張り出そうとぶつかっていき。約束が呪いとなっているのではないかと厳しい事を言われ、己の心を揺らす宗佑。

 

しかし絵を描かなくなったとはいっても、ふとした瞬間に感じる侑理の天才性。逆立ちしても尚叶わぬその才覚に、打ちのめされ。

 

「何度だって書いてやる。才能を言い訳に、諦めたりはしない」

 

 それでも尚、何故絵を描こうとするのか。先輩である楓の申し出により彼女をモデルとした絵を封じ、同じ場へと上がってきた侑理に自分自身の描きたいものを武器として挑んでいくのは何故か。

 

「人生を描けて描き続けていきたいって思ったんだ」

 

それは、描いていく中で大切な思いに気付いていけたから。自分の絵を褒めてくれた、好きだと言ってくれた。侑理ではなく、自分自身の事を認めてくれた。だからこそ見つけられたものがあるから。漠然としたものが形となり、自分の未来線上でまるで光のように輝き始めたからである。

 

 だからこそ、筆を剣にパレットを盾に。最強の才能と言う強敵を相手に、今日もまた努力を怠らず立ち向かっていく。交わした約束を忘れぬ為に、そして己自身の夢の為に。凡人だとしても、それでもと。

 

正にこの瞬間にしかない青臭さ、一瞬の等身大の輝きが溢れているこの作品。正に青春ドラマ、何処にもない面白さがこの作品には溢れている。故にこの作品、胸をこれでもかと打つような面白さがあると太鼓判を押したい。

 

熱く鮮烈な青春を楽しみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

青のアウトライン 天才の描く世界を凡人が塗りかえる方法 (ファンタジア文庫) | 日日 綴郎, むっしゅ |本 | 通販 | Amazon