読書感想:あの頃イイ感じだった女子たちと同じクラスになりました

 

 お付き合いというのは告白しなければ始まらない、と声を大にして言ってもそれは当たり前だと返されたらそれはその通りであるのだが。あの頃イイ感じ、だったとしてもその先に発展しなければそれは後悔として残ってしまうかもしれない。しかし後悔しても時は巻き戻らぬ訳で、戻れる訳でもない。この作品はそんな、後悔から始まるお話であり。あの頃の思いが、動き出すお話なのだ。

 

 

中学校時代はハンドボール部に青春を捧げるもとある出来事がきっかけで、高校生になった今は帰宅部な少年、涼太。彼には今までで三つ、心残りがあった。それは彼のモテ期、的なものが今まで三回あったと言う事。しかしその全てで何も進まなかった、という事。

 

「えー、あたし本能で察するからな~」

 

そんな彼は、「イイ感じ」というのを恋愛の第一関門に考え、かつてそこまでは言った中学時代からの級友、由衣(表紙左)と何気ないやり取りの中で揶揄われながらも日々を過ごす。

 

「私ね、よっしーのことは友達だと思ってる」

 

その中のある日、かつての塾仲間であり同じ高校に通うも今までは距離のあった優佳(表紙中央)にお手伝いをお願いされ、また何気ないやり取りをする事が出来て、関係が動き出す音を聞いて。更には心の何処かで待っていた、転校した幼馴染である麗美(表紙右)が転校してきて、彼の今の家のお隣さんになり。あの頃、動けなかった関係が動き出していく。

 

「絶対帰ってくるって言ったでしょ」

 

あの頃とは違う距離感、大人になった部分。だけどあの日と変わらぬ、心の在り方。唐突な再会、しかし打てば響くような関係はすぐに。麗美と取り戻していく、幼馴染という関係。

 

「きっかけはそれだったってだけ!」

 

かつて中学生時代の出来事で沈み込んでいた自分、そんな自分を救ってくれたのは由衣。何故助けてくれたのか、その始まりを改めて見つめたりしつつ、しかしこの気安い関係は変わらなくて。

 

「見せたい部分を見せられる。それだけで良いだろ。見せたくないところは見せなくていい」

 

その最中、動き出していくのは優佳との関係。あの頃は届かなかった、明かしてくれぬ部分。だけど無理に触れていく必要はない、見せてくれなくてもいい、と。あの頃とは違い成長した心がイイ感じ、を導き出して。二人の関係は確かに動いていく。

 

「何も言えないし、何も言わせないよ」

 

だけど、麗美の目からしたら、優佳は信用に足りえず。涼太に見せぬ意味深な顔、まるで煽るような言葉の裏。 どこか不思議な彼女の素顔、その裏にはもしや、何か隠れているのか。

 

あの頃の燻る思いが動き出す、リスタートの裏に油断ならぬ雰囲気が隠れているこの作品。色々な意味で太い、一筋縄ではいかなさそうなラブコメが見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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