読書感想:居候先の三姉妹がえっちなトレーニングを求めてくる

 

f:id:yuukimasiro:20210422223555j:plain



 さて、スポーツは楽しいもの、熱中できるもの。何かスポーツを嗜まれたことのある読者の方であれば、その気持ちもわかっていただけると思う。だがしかし、スポーツは時に痛いものである。スポーツによってはケガも絶えないし、時に大けがをする事だってある。だが、この作品のヒロイン達であれば、そんな事も気にならない、のかもしれない。

 

少し話を変えるが、画面の前の読者の皆様は十種競技、又は近代五種競技というスポーツをご存じであろうか。簡単に言えば、様々なスポーツの競技を一つずつ行い、その合計点で優劣を競うという、控え目に聞いてもキツそうな競技であり、オリンピックの中継でもなければ見た事のないかもしれない、そんな競技。

 

 この作品の主人公、五記はそんなキツい競技の中の一つ、十種競技ジュニアオリンピック金メダリストという輝かしい経歴を持つ少年である。だがしかし、今の彼は競技中の事故により大けがを負い競技を引退し、どこか燻った日常を送る陰気と噂される少年である。

 

そんな彼はある日、自身が通う学園の理事長から、自身の競技復帰のサポートを条件とし、とある依頼を持ち掛けられる。

 

 それは、「文武両道」というこの学園の理念を実践する為に、スポーツ初心者である娘の三姉妹を高校卒業までに、何かのスポーツの全国大会まで押し上げると言う事。それを叶えられなくては三姉妹に待つ未来は只一つ、政略結婚の一択のみ。

 

結果として依頼を受けた五記は、三姉妹の住まう家に住み込みでコーチを務める事となり、三姉妹と邂逅する。

 

長女で先輩で生徒会長、一衣(表紙左)。同級生な次女、二花(表紙中央)。後輩である三女、三久(表紙右)。

 

 普通であれば、全く以て無理、とも思える無茶な依頼。が、しかし。幸か不幸か、三姉妹にはそれぞれ、とあるスポーツへの類まれなる特性が存在していた。が、しかし。その根底にあったのは、それぞれの秘していた変態性である。

 

二花はみられる事に興奮する露出癖、故に彼女にはまるで裸のように見える衣装で行える陸上競技のハードル走を。

 

責める事が大好きなドSだった一衣には、合法的に人を責める事のできるフェンシングを。

 

そして、痛いのが大好きで興奮するマゾヒストな三久には、日常的に痛みが味わえるラグビーを。

 

秘めていた変態性を解放できる相手を見つけて安心できたのか、自分にだけその変態性を解放してくる三姉妹に振り回され、その隠匿に苦労して溜息を吐き。

 

「わかるさ。何度も走って、そのたびに自分の走りを分析してきた。走れなくなったとはいえ、『プリンス・オブ・アスリート』だからな」

 

だが、その心には熱がある。枯れ木のようだった自分の心に再び宿った、競技への熱がある。だからこそ、真っ直ぐに彼女達と向き合い、彼女達の為に一生懸命に頑張れる。

 

ラブが介在しない、コメディにほぼ全振りしているが故に、変態性が際立ち。だが、その変態性がスポ根にある意味で拍車をかけているからこそ、ラブコメ溢れる今のラノベ界において、唯一無二の面白さを持っているのかもしれない。

 

変態なヒロインが好きな読者様、何も考えず笑いたい読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

居候先の三姉妹がえっちなトレーニングを求めてくる (オーバーラップ文庫) | 坂東太郎, さとうぽて |本 | 通販 | Amazon