読書感想:オリヴィア嬢は愛されると死ぬ ~旦那様、ちょっとこっち見すぎですわ~

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様は「どんな医者でも治せない不治の病」というのは何か、ご存じであろうか? 不治の病、というのはこの世の中にいくつか存在はしているが、医学の進歩次第ではいつの日にか、治らぬ病気ではなくなる日が来るのかもしれない。では、どんな医者でも治せない、と断言される病とは何であろうか? まぁ、もうお察しであろう。そう、「恋」である。恋の病、というのはどんな医者でも治せはしないのだ。

 

 

それもまぁ、皆様ご存じであろう。恋の病、というのは成就か失恋か、その二つしか処方薬はなく。どちらに転ぶかは物語次第。ではこの作品はどうなのであろうか? 早速見ていきたい。

 

「はい。あなた様には死んでいただかねばならぬのです」

 

大商家の長女であるも、社長であった父親が、国の威信をかけた品を海外に運ぶ途中で嵐に巻き込まれ船ごと海底に沈み。屋敷と財産は全没収、路上生活者になったオリヴィア(表紙右)。未成年の弟妹と病気の母親を養うために悪名高き娼館の扉を叩こうとしていた彼女は、謎の老紳士に声を掛けられ。前金金貨五十枚、成功報酬金貨五十枚という破格の内容の仕事を受ける事となる。

 

その内容とは、死ねというもの。と言っても誰かの身代わり、とかではなく。謎の老紳士はオールステット家という貴族の家の使用人。その家は二代前の当主、その妻が遺した呪いにより三代祟られ、かの家の男が愛した女は十二月、冬の満月の夜に死ぬ。その呪いが解けるのは今代、誰かの命を以て。その為の犠牲、生贄を求める願いに応じ。オリヴィアは当主の婚約者、として呪われた屋敷に出向く。

 

「だが私は可愛いなと思ってるだけだ別に愛してない今はちょっとあまりにも急だったので少々びっくりしているだけだ」

 

「息継ぎしましょうよ」

 

 

そこに愛はなく、愛はいらぬ、その筈だった。しかし、現在の当主であり女から隔離され育てられてきた青年、クラース(表紙中央)はオリヴィアを一目見るなり、恋と言う不治の病にかかってしまい。彼女を見て、湧いてくるのは素直な褒め言葉ばかり。しかし惚れてはいけぬ、と自戒し一先ず仮初の共同生活をする事となる。

 

「君という人は、明るくて楽しくて可愛いんだな」

 

クラースを含め、使用人も男ばかり。いわばこの家は男の家。そんな中に一人放り込まれたオリヴィアは、しかし持ち前の社交性であっという間に使用人たちと打ち解けて。気が付けば、惚れてはいけぬと自戒しているのに。クラースの心はどんどんと恋に埋められていく。 少年の心が今まで停滞していた分を取り戻すかのように、本人なりに不器用に恋を知ろうとしながら。まるでおままごとのような、結婚生活を築いていく、巡季節の中で。

 

嵐の日に同衾して、互いのぬくもりを感じたり。二人、夜の世界で流れる星を眺めたり。好きになるのも、恋をするのも、愛してしまうのも、当たり前だったのだろう。

 

「あなたのご家族は誰も、そんなものを望んでいない」

 

例え別れがつらくなる、だけだとしても。もう受け入れた筈だった。刻限間近に迫る中、届けられるのはオリヴィアの母親の言葉。元気になった家族は誰も死を望んでいない。ここより物語は急展開を迎える。諦め受け入れる、のではなく最後まで抗う道へ。

 

 

さて、ここで解呪のキーとなる呪いの根源、二代前の当主の妻が遺した呪具である針。これは一体どこに隠されているのか。屋敷を全て、それこそ土の中まで探したのにどこにあるのか?

 

 

その答え、それは最初からすぐそこに。その鍵となるのは、「愛」。実は家族に事情を抱えたオリヴィアが、家族から向けられる温かみのある愛、ではなく。夫人の、最後まで信じようとした、知って欲しい、見つけてほしいと叫んでいた「愛」。声にならぬ遺された叫びを聞いた時、呪具はそこにあって、呪いはようやく風に消えて。

 

「あなたを愛している」

 

そして、呪いが消えた後に残るのは? それはまごう事なき純愛。何の柵も無くなった、誇るべきもの。 ここに本当の夫婦となって、末永く続いていくものだ。

 

様々な形での愛が見える、心が浄化される清らかさに満ちたこの作品。愛のお話、読んでみたい方は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

オリヴィア嬢は愛されると死ぬ ~旦那様、ちょっとこっち見すぎですわ~ (SQEXノベル) | 紺染幸, DSマイル |本 | 通販 | Amazon