読書感想:「一緒に寝たいんですよね、せんぱい?」と甘くささやかれて今夜も眠れない2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:「一緒に寝たいんですよね、せんぱい?」と甘くささやかれて今夜も眠れない - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で不眠症という関係同士という事で始まり、独特の絆で結ばれた獏也と君鳥の関係であるが。お互いの抱えている問題である不眠症、というのがもし解決されてしまえば。二人の関係は終わりを迎えるのであろうか。そうなってしまう前に求められるのは何か、そこに触れていくのが今巻なのである。

 

 

だがしかし、まだ獏也の中に恋心、というのは育ち切っている訳ではない。まだ彼の中でその思いは、形になりきっていない。まずはそこに形を与えていくのが重要、とも言えるのである。

 

「今なら夏休みという免罪符がありますよ」

 

そんな二人が迎えていくのは、夏休みというお楽しみのイベント。君鳥のからかいがちょっとだけ色を変え、少しだけ大胆になったおちょくりと化して振り回されたりする中で。二人は同じ時間を共有していく。

 

ある時は獏也の思い出のゲームで黒歴史が抉られ、思わず悶絶してしまったり。不眠症の対策として瞑想を試してみたら、君鳥の攻めに煩悩を刺激されてやっぱり失敗に終わってしまったり。

 

そんな中、夏祭りの場で君鳥の過去の因縁と仲直りしたり、更には彼女の思い出の地を訪ねて諸行無常の空気を感じたり。

 

「悪い子は嫌いですか、せんぱい?」

 

更には、真夜中の海で二人きりになったり。どんどんと近づいていく距離の中で。彼女のからかいが心地よいものとなっていく中で。獏也の心の中、想いは確かに固まっていく。

 

しかし、そこで立ち塞がってしまうのがちょっとした誤解。しかし獏也にとっては君鳥を巻き込みたくない大きな誤解であって、彼はその為に彼女から距離を取ろうとする。

 

「私の陰キャっぷりを舐めないでくださいッ!」

 

しかし、彼女は彼を引き留める。突き付ける。彼女は彼が思うより、強い人間ではないと言う事を。彼女にもまた、彼が居ないと駄目なのである。とっくの昔にそうなってしまっていたのである。

 

「君鳥ちゃん、オレはキミのことが好きだ」

 

ならばもう、躊躇わずに勇気を出して。嘘を並べて隠すのではなく、不器用でもいいから全てを曝け出して。まるでラリアットを繰り出すように、一気呵成に告白を繰り出して。君鳥もまた、二人の関係を象徴する言葉で応えていくのである。

 

ここに重なる二人の関係、名前が付くのは新たな形。その先をもう少しだけ、拝んでみたい。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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