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読書感想:紅蓮戦記1 天才魔術指揮官は逃げ出したい - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれた読者様であれば主人公であるマクアディが背負わされたものと、目指すべき所についての困難さというのは理解されているであろう。国は亡国、残るは自分達のみ。そんな中で目指すのは、国の復興。その為に求められるのは、なるべく戦争を長引かせ、敵国たちを疲弊させる事。その為にはじり貧だとしても、戦い抜かねばならぬのである。
ではここで、画面の前の読者の皆様に聞いてみよう。そも、戦争において最も効率的な嫌がらせとも言えるかもしれぬ、自分達の補給にもなる作戦とは何であろうか。答えは勿論、簡単である。それ即ち「補給物資の強奪」。卑怯汚いなぞ敗者のたわごと。これは戦争、それだけである。
「はい。それそこそが我が国にとって起死回生の策になりえます」
そして、前巻でマクアディの元へと押しかけてきた元友好国の姫、エメラルド。危ない橋を渡っているかと思えば、彼女の故郷であるリアン国の内閣は連合国に降る事を選ばず。マクアディを秘密裡に支援する道を選び、結果として国の支援を得る事に成功する。
内閣にとっても値千金のエメラルドの恋。マクアディにとっても得難き条件付きだが大きなバックアップ。かつての学友であるステファンという知恵袋も得、相も変わらずイクスと漫才めいたやり取りを繰り広げながら。補給物資を奪いそれを売って経済を回し。補給を断つ事で連合国の軍勢を大いにかき乱していく。
が、しかし。その行いは否が応でも敵の目を引くものであり。彼の首を取らんと、大きな魔法の力を持つ王族が襲来する。その名はシーナ。アスタシアの後輩であり、連合国の一つであるニクニッス国の第一王女である。
マクアディと同じ火の適性を持ち、彼よりも強大な力を持ち。虎の首を取らんと、圧倒的な炎の力が襲い来る。
「敵対するなら遠慮はしない」
が、しかし。マクアディにとっては苦労はすれど、負ける要素はない相手であった。何故ならばシーナが行っているのは戦争ではなく決闘。戦場を知らぬ王族故の頭でっかちなプライドと愚劣な作戦力。除名を懇願してきたアスタシアを捕虜とし、シーナは命を取らず逃がし。だが激高したシーナは連合国の軍人であるベルベフ達を脅し、執拗に彼等の命を狙ってくる。
だがそれでも、対極を見据える彼等の敵に非ず。敵となれぬのであれば、撃滅するのみである。
寧ろマクアディにとっては頭の痛くなる問題はそれ以外。向き合わなければいけないエメラルドの気持ち。ラディアやメディアとエメラルドの仲の取り持ち。
「これからですな」
そして確かな成果として取り戻した一部の領土。そこから始めていかねばならぬ、新たな意味での戦い。
しかし、彼はまだ知らぬ。戦況が膠着する内、動乱の芽が芽生える事なんて。ましてや他の大陸から異形の軍勢を率いた最強の敵、「優しすぎる大軍師」が襲来する事なんて。
故に戦いはここからが本番、まだまだ気は抜けないのである。
前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。