読書感想:恋は双子で割り切れない4

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:恋は双子で割り切れない3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 覚えていますか、目と目があった時。手と手が触れあった時。純と琉実、そして那織にとっては何度も何度も数え切れぬ程に積み重ねたほどに経験したもの。その度に恋をする、恋を重ねる。そうして積み上げてきた恋は、簡単に譲れるものじゃない。と、言うのはシリーズファンである読者様にとってはお分かりであろう。前巻で純の精一杯の努力により、少しだけ答えを出す猶予を得て。しかし、恋の答えはもう保留できない。答えを出す時はもうすぐそばまで迫っている。割り切れぬ思いは、最高潮に絡まっていくのである。

 

 

「我慢できなくなったって良いよ」

 

前巻、那織が純の家に泊まり、彼女が帰った後に彼女の痕跡を必死に消して。しかし那織がいたずらと言わんばかりに純の家の洗濯機に放り込んでいた下着が母親に見つかってしまい。何とか誤魔化すも、何処か理解されているようで。そんな彼の思いを知ってか知らずか、那織はまるで思い出させるように、純へと妖しく迫る。

 

「那織に決めてないって言うなら、純からわたしにキスして」

 

その事実を知らず、けれど知ってしまった。琉実は憤慨し、どこか壊れそうな程、縋りつくように純を求め。那織とキスした口で琉実ともキスをする、という逃れられぬ連鎖へと堕ちていく。

 

 そう、もう止まれない。止まらない。もう待ってはいられない。考えなくてはいけない、向き合わなくてはいけない。必死に自分の思いに向き合おうと思い悩む純を、周りの者達はまるで敵対するかのように、それとなく急かしてくる。本当は敵なんていない、その筈なのに。

 

母親にそれとなく釘を刺され、友人である「教授」からもそれとなく諭されて。

 

「ちゃんと選ぶ気あるんですか?」

 

更には琉実を慕う後輩、柚姫もまた純へと詰め寄り結論を迫ってくる。彼の思いも知らずに。

 

「そろそろ潮時だとは思ってる」

 

 けれど、彼にもわかっている。もうこの関係は先延ばしにはできないと。だが、最後まで揺れ惑う。その揺れが那織とのすれ違いと喧嘩を招き、仲裁に入ろうとした琉実もまた、純の何気ない一言で傷ついてしまう。

 

だけど、もう一度向き合い、いつも通りの何気ない時間を重ね、純と那織だからの「会話」をして。仲直りした先に迫る、純の誕生日。

 

「明日、二人に言うよ。これからどうするのか」

 

 その前日、遂に純は自分の心に結論をつける。何もないんじゃない、自分の手が持ってたものを見つめ、見えてないようにしてた方が楽だったものに名前を付けて、方向性を見定める。

 

背徳の色すら漂わせていた割り切れぬ三角関係、決着をつけるべく決まった己の気持ち。だがそれは「彼女」を傷つける選択肢。

 

果たして決戦の日、そこには何が待つのか。

 

次巻、刮目せよ。

 

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