読書感想:あそびのかんけい2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:あそびのかんけい - 読樹庵

 

 さてさて、この巻の感想を開いている方は前巻を読破済みという前提のもとにこの後の感想を書いていきたい次第であるのだが。前巻を読まれた読者様であればご存じであろう。孤太郎と月乃とみふる、三者三様の思いが絡まり合う、しかし動けない。人間関係がこんがらがってとっ散らかっているように見えて、実は緻密に計算された上に成り立っている、それぞれの持ちうる情報が違うこの関係。しかし停滞するかに見えて、動き出していくのが今巻なのだ。

 

 

 

「全然違うでしょ、ばか」

 

前巻の後、断捨離しようとするみふるを止めたり、相変わらず樹が迎えに着たり。その中で語られる、孤太郎の高校時代の人間関係のお話。推しへの愛が一定ラインを超えると何故か推しに不祥事が出て没落するボドゲ仲間、武士とその元カノであり孤太郎を敵視していた半杭という二人のお話。退学して以降何故か既読無視している武士から、一年振りに連絡があった事で今巻の物語は動き出す。

 

「それ、あたしも一緒に行こっかな」

 

「・・・・・・本当に、キミは『いい人』だよね」

 

ボドゲカフェに置く新作のボドゲ探しにみふるもついてくることになり、二人で新宿へ。そこで何処か、彼氏持ちとは思えぬほどに距離の近いみふる。その心中、語られるのは孤太郎への感謝と真っ直ぐな「好き」という感情。本気で寄り添いたい、ずっと支えたい。そう思っているのに、孤太郎と同じくしゃがみこんでいる思い。

 

「しゃがむのは、もうおしまいかな」

 

そんな中、見てしまったのは孤太郎が「半杭」に絡まれている現場。距離の近い、「半杭」を見て浮かぶ思い。しゃがむのは、もうおしまいにしようと、動き出さんと決意していく。

 

「喧嘩売ってます?」

 

その裏、もう一つのストーリーライン、それは月乃のもの。ウタマルとして孤太郎と久しぶりに接する中、知るのは彼の想い人に関する嘘。最初は偽り、しかし今では好ましく思っているという思い。更に彼女へ「樹」として持ち込まれるのは、偽装の依頼。それは何と「半杭」からの依頼。奇しくも孤太郎は吉祥寺へお出かけしていって。嫉妬したみふるについていって目撃したのは、武士と半杭に関する認識の致命的なズレ。

 

「誰かに遠慮しながら勝てるほど、恋愛ってゲームは優しくないわよ?」

 

目撃する武士の思い、それは自分達の知らない孤太郎を取り巻く人間関係。何かを目論む半杭が孤太郎に忠告する中、みふるは動こうと決意を固め。

 

「そろそろ『あそびのかんけい』は、終局といたしましょう」

 

しかし、先手は貰ったと言わんばかりに月乃が爆弾を投げ込んで。関係性に確かな波紋が生まれるのである。

 

ゆるふわ?なラブコメ?かと疑うような、ミスリードが散りばめられた中、人間関係が多様化し、確かに動く今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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