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読書感想:人妻教師が教え子の女子高生にドはまりする話2 - 読樹庵
さて、いよいよ前編、中編、と来て後編。凛に懸想し、決して戻れぬ道とはわかっていたけれど、己の決断で突き進んだ樹、である。彼女の中、大人な部分は訴えてくる。遠からず自分は破滅する、裁かれる日は来ると。それもまた当然であろう。樹は世間的に見てしまえば犯罪者、ではある。それでも突き進んだ、分かっていたのに。その果てまでが描かれる巻なのだ。
「泊めちゃっていいの?」
「よくはない」
前巻の最後、母親に断絶を叩きつけ樹を頼ってきた凛。放り出す、という選択肢は当然ない。今や樹にとって凛を捨てると言う事は自殺にも等しいのだから。どこか釈然としない様子ながらも納得してくれた夫に、教師としてという建前で誤魔化して。凛の荷物を回収に向かった家で、試すような態度を取る凛の母に拒絶を叩きつけ。
「幸せを感じちゃってた」
始まる同居生活。お揃いの食器を買いに行ったり、樹の部屋で一緒に過ごしたり。離ればなれ、ではなく近くに彼女がいる生活に感じるのは幸せ。それは夫との生活では感じられないもの。だがそれは、その受容は周囲への露呈を少しずつ招いていく。気が付けば指摘はされずとも、夫を始め何かを勘付く者達が増えていく。
「夫と別れて戸川さんを引き取って生涯幸せに暮らします」
それは凛の母も同じ。ある意味弱みを握ったようなもの。母親と言うスタンス、役目を放棄した彼女にどうするのか、と試されて。口に出したのは、決定的な言葉。
「俺もしっかり浮気してきたぞ。これなら、どうだ?」
そして、総てを察していた夫は、敢えてキャバクラに行く、という見方によっては浮気ともとれる行動で、樹と目線を合わせて。ようやく言いだして、夫との関係にエンドマークを打って。己の罪にきっちりと向き合い、義両親にきちんと報告して。
「また、必ず帰ってくるから」
凛の元に帰って、初めての告白をし。もう遮るものはない、と二人で淫猥な行為に耽溺し。過ごすのは爛れ切った、愛欲の日々。しかしそれにも終わり、裁きの時はやってくる。だけど逃げない、きちんと受け止めると決めたから。凛に必ず帰ってくるからと約束し、己の罪を裁かれる場へ向かい。
そして、幾ばくの時が経つ。立場も信用も何もかも失って、西へと流れてたどり着いたのは、親類である前川太陽さんが経営する居酒屋。雲一つない青空を詰め込んだような髪色をした、光る髪を持つ母子が暮らす町で。
「せんせぇ、焼き鳥の匂いがする」
「今日も一生懸命働いてきましたから」
何もかもを捨てて、振り切って。二人でこの町で、生きているのである。
溺れた果て、罪と罰の先にたどり着いたのは二人の幸せ。皆様も是非見届けてあげて欲しい。
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