読書感想:バカ可愛い彼女たちの、俺専門攻略チャート

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様は、バカ可愛いヒロインと聞いてどんなヒロインを連想されるであろうか。画面の前の読者の皆様の心の中にも推しのおバカヒロインがいるかもしれない。この作品のヒロイン三人も、それぞれおバカな所を持っていて、そんな彼女達の魅力が詰められた作品、という感じである。ではそんなヒロイン三人は何故、主人公に惚れたのか。それはこれから見ていこう。

 

 

五年前、とあるゲームメーカーの公式動画に抽選で出演できることになって、何故かリアクションや発言がネット民に異常なほどウケてしまい、ネットミームにされてしまった少年、時臣。ある日、高校入学前に突如送られてきたメッセージ、それは過去の自分と今の自分を知る、いわば特定被害。それを送ってきたのは、二年以上応援し続けているネットアイドル、「白華カナエ」。高校入学前の貴重な休みを特定に費やし、候補者を三人にまで絞り込み。

 

「私たちは三人で、とある活動をしているの」

 

その彼の前に真実は明かされる。「白華カナエ」、その特徴を持つ三人は、三人でカナエという偶像を作り上げていたという事。一華(表紙右)は実写担当、神奈(表紙左)はゲームプレイ担当、紫(表紙中央)は声と編集担当。そして三人はそれぞれ、時臣の事、正確に言うとミームになった時臣の事を崇拝していた。一華はゲーム中の彼の指先を、神奈はその声を、そして紫は彼の心を。

 

「じゃあ俺が、誰もマブオミ君に恋していないって証明するから!」

 

しかし彼女達が崇拝していたのは、ミームになった時臣、「マブオミ」。現在の時臣を見ている訳じゃない。そして崇拝であって恋じゃない。しかし三人に不和が訪れた時は、解散するという流れになるらしく。時臣は推しのネットアイドルを守る為、恋をしてないという悪魔の証明に挑む事に。

 

「百点を出せた少年は、九十九点しか出せない男になった」

 

そんな中、触れていくのは三人の素顔。完璧を求めた一華は壁にぶつかった時にマブオミに救われ。神奈は格好つけたがりで他の人の期待に応えようとして、理想をマブオミに見出して。 カナエという偶像を守る為に負担を人知れず背負っていた紫は、その真っ直ぐな心に救われて。

 

「隠しごとなんて、しなければ良かったね」

 

関りの中、明かされていくのは彼女達にとっての救い、誰が恋をしているのか。今見ているのはマブオミではなく、時臣。一度救われただけではなくて、二度も。その中で芽生えていた思い。

 

「本当に、幸せだね」

 

それは崇拝、ではなくガチ恋。それは互いに。時臣にとってもカナエという偶像は、三人揃って自分の希望。 それを伝えて、一番近いその距離で。新たな関係を始めていくのだ。

 

おバカなヒロイン達によるボケとツッコミのドタバタの中、仄かなラブコメがあって。まさに「楽しい」愛に溢れたこの作品、流石は月見秋水先生である。 そんな笑えて楽しいラブコメを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: バカ可愛い彼女たちの、俺専門攻略チャート (MF文庫J) : 月見 秋水, 塩こうじ: 本