読書感想:脱力ゆとりギャルちゃんは、全力で僕に寄りかかって生きることに決めた。1

 

 さて、脱力系、ゆとり系というキャラは最近のラノベでは中々見ない気がするが、皆様はどう思われるであろうか。脱力系なキャラというのはどんな要素を付与されがちであろうか。天才系な特技、を持っていたりするのかもしれない。ただゆるいだけのマスコットなキャラであるのかもしれない。と言う訳でこの作品のヒロインこそタイトルの通り、脱力ゆとりギャルの茶見子(表紙)である。

 

 

そして持崎湯葉先生のファンである読者様は持崎湯葉先生の十八番はご存じであろう。そう、癖の強め、唯一無二な個性を持つヒロインである。そしてヒロインに限らず、特色のある登場人物達である。そんな者達が織りなすのがこの作品なのだ。

 

「本当に同じ構成元素で出来てる人間なのか、怪しく思えてくるよ」

 

母子家庭で育ち妹である桃の父親代わり、家計に負担をかけないためにバイトに励む少年、朔。その隣の席のギャル、茶見子、通称ちゃみ子。シャミ子でもれな子でもなく、ちゃみ子。全ての行動が遅く、更には子音を話すのも疲れると言う位の脱力系。会話も続かぬ彼女は遠巻きにされていて。

 

そんなある日、入浴後に髪を乾かさずに冷房かけて寝てしまった事で茶見子は軽く体調を崩し。しかしペットボトルの蓋も開けられぬ彼女を思わず手伝ってしまった事で。学級委員長である朔のタスクに、茶見子のお世話、が追加される。

 

「距離感バグっちゃった?」

 

しかし朔は見誤っていた。依存対象、もとい全力で寄りかかれる対象を見つけた茶見子の甘えっぷりを。ぴったりとくっついてくるのは当たり前、移動にはおんぶを要求するは、昼寝に膝枕を要求するは。

 

「やらなきゃいけないことなんて、本当はひとつもないんだよ?」

 

それでいいのか、と朔は問う。いずれ大人になる、だから寄りかかれぬ日が来ると説く。しかし茶見子はいつもの眠そうな顔で、深いかもしれぬ事を言い。それは朔の心にひっそりと引っ掛かる事に。

 

そう、やらなきゃいけない事、それは朔にとっては当たり前の事。しかしそれは本当にそうなのか? そんな問いかけは置いておいて。実は髪が好きな朔は、茶見子の髪のお世話に快感、対価的なものを見いだして。気が付けば彼女の家にも通うように。

 

「がんばると、疲れるんだよ」

 

だが抱え過ぎたタスク、やるべきことは朔の身を削ることに。体調を崩して倒れてしまった朔の元を訪ねた茶見子が持ってきたのは皆の気持ち、皆のいい言葉。頑張りすぎる朔の事を心配し、休んで良いんだよと気遣う言葉。

 

「いいよ。寄りかかるのは得意だから」

 

そんな温かな言葉に、朔の心の中で何かが変わりだす。少しだけ重荷を下ろそうとする心が芽生えて。茶見子に寄りかかり方を聞いて、少しだけ気を抜いていく新たな日々が始まるのだ。

 

いい意味でのゆるさが魅力な、ゆるりと楽しめる持崎湯葉先生の真骨頂。そんなふわゆるな面白さを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

脱力ゆとりギャルちゃんは、全力で僕に寄りかかって生きることに決めた。 1 (オーバーラップ文庫) | 持崎湯葉, なたーしゃ |本 | 通販 | Amazon