
さて、義妹と言うのは無条件に可愛いものなのだろうか? 既に関係が醸成されている状況から始まるのであれば無条件に可愛い、かもしれない。しかしもし、関係を一から始める所から始める、としたら? 始まりは家族、ではなく他人の距離感からスタートとしたら? 無条件に可愛い、とは言えるのだろうか。
という、なんちゃって哲学的な話題はともかく、として。この作品の主人公、陸都にはある日五人の義妹が出来たところから始まるのだが。王道青春グラフィティ、青春ラブコメ、ではあるのだが。まず今巻においては地盤固め、まずは家族になる所から始まるのである。
「実は父さん、再婚することにしたんだ」
高校二年生のある日、シングルファーザーである父親から突然に言われたのは、再婚のお知らせ。既に引っ越し作業も始まっていて、顔合わせから始まる事に。長女である高校二年生の地夏(表紙中央)、次女である高校一年、水緒(表紙右下)と火鈴(その隣)の双子姉妹、四女の風香(表紙左上)、五女である小学一年生、空音(表紙右上)の五人姉妹と顔を合わせることに。
「私の妹たちに近づくな。さもなくば、お前の命はない」
が、しかし。顔合わせから何故か地夏の態度は最悪、いきなりスタンガンを向けて警告してくる、というヒロインどころか人間としてどうなのか、という態度を取られ。家族どころか共同生活、と言ってもいいのかという距離感で共に生活が始まって。転校生として陸都と同じクラスにやってきた地夏は、才色兼備な所を見せるも不意に声をかけて来た男子を背負い投げし、浮いてしまう事に。
と言う訳で共同生活、は始まって。しかし地夏以外の四姉妹は一枚岩、かと思えばそれぞれの動きを見せる。水緒はこっそり近づいてきて、風香はお嬢様らしい顔の裏を見せて、空音は無邪気に甘えてきて。そもそも姉妹も母親も料理が出来ぬから食事もままならぬ義妹たちを支援していく中、少しずつ近づいてはいく。
「家族って、難しいわねぇ」
しかし地夏は怖いくらいに刺々しい。こうまで語ると青春グラフィティの邪魔者、ラブコメのノイズに見えてしまうかもしれない。が、どうか我慢頂きたい。姉妹の母親である奈月が明かした過去から、地夏の内面は見え始める。彼女は只、頑ななだけ。忙しい母に代わり母親代わりをやってきたからこそ、自分が守らねば、という思いに囚われているだけなのだ。
「お前ひとりで、たったひとりで、四人も守れるわけないだろ!」
「共同戦線を張ろう」
そんな中で巻き起こるのは誘拐騒動。地夏と共に下手人のアジトに乗り込み大立ち回り、結果早とちりで全員無事という結果になるも。突き付けるのは地夏一人では、四人分と言う重荷を抱え続けるのは無理だという現実。それでもと叫ぶ地夏に提案するのは共同戦線の誘い。二人で妹達を守る、と約束して、やっと地夏の心もほどけて。これより青春の始まりとなるのである。
時に厳しく痛く、しかし不器用にでも家族になっていく熱さがあるこの作品。大きな作品の始まりを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。