読書感想:装翼のドラグーン ~高校生からはじめる!移動都市でSF傭兵生活~

 

 さて、この作品の作者様であられる天酒之瓢先生の代表作は? と画面の前の読者の皆様に問いかけてみれば、多分ナイツ&マジック、という答えが大多数の方から返ってくるであろう。なろう小説から始まり、書籍化から漫画化、アニメ化を経て、遂にはSF、ロボットものとしての夢であろうスーパーロボット大戦シリーズへの出演まで。正にサクセスストーリー、私も参戦作ではイカルガに切り込み隊長として暴れてもらっていた訳であるがそれはさておき。天酒之瓢先生と言えば、SF、ロボットものである。と言う事でこの作品もまたSF、パワードスーツものなのだ。

 

 

「つうか・・・・・・ここはどこ?」

 

母子家庭で姉と共に育ち、まぁまぁ困った家族からの自立を目指す少年、朝輝(表紙左下)。ある日、帰り道。空から降ってきた隕石に激突し身体は消滅、目を覚ましたら何一つ見覚えのない場所、目の前にいるのは見た事もない丸っこいロボット。 「機械知性」、ベリタスと名乗ったそのロボットをベリ太と勝手に相性を付け話を聞けば、朝輝がいたのは「廃棄都市」と呼ばれる都市の残骸であり、朝輝の生きた時代からは七百年の後との事。ベリ太にご飯は貰えるもそのまま放り出され、歩き出したところで襲い来たのは「異蝕体」、オルトと呼ばれる地球外生命体、侵略者。強化戦闘躯体、バトルドレスと呼ばれる巨人を呼び出したベリ太が戦闘を始める中、受けた恩を返したいと戦う力を探す朝輝が見つけたのは白骨と、それが纏う装備。借り受けようとした時、動き出した骸骨が放つのは謎の言葉。それに啖呵を切り返し、意識は暗転、目覚めた時には白骨は消えていて。その場に残されていた強化武装、「クロウゴースト」を纏い飛び出し。武装はないものの、ベリ太の助けを借り放った突撃は、オルトを一撃で消滅させて。

 

武装どころか動力源すら積んでいない謎の機体とベリ太を連れ、歩き出した未来世界。まずであったのは、家出少年、ルーノア。彼を拾い、都市を探す中、傭兵であるエイヴリル(表紙右上)が戦闘中苦戦している現場に遭遇、放っておけず介入し。彼女に最初は敵と疑われるも誤解を解いてもらい。彼女の住処である移動都市、「ハイラテラ」に傭兵として住む事に。

 

「何だか俺、頑張れそうな気がしてきたよ!」

 

それは未来世界なれど、望んだ一人暮らし、自立の機会。都市運営者が住む第一層、富裕層が住む第二層、普通の人々が住む第三層のカーストに別れた移動都市で。傭兵となりエイヴリルと同じ部隊、うだつのあがらぬ中年、フォルマットが隊長の部隊に入り。 初めての任務で過剰火力でやり過ぎたり、傭兵となったルーノアが選んだ貸出機体でトリガーハッピーに目覚めたり、未来世界の食事を改良したり。時々面倒な奴に絡まれたりしつつ、この世界に息づいていく。

 

「なのにお前は、そこで座り込んだままなのか」

 

その最中、オルトは朝輝、ひいてはクロウゴーストに目を付け、滅びの使いとも呼ばれる強力な異蝕体を差し向ける。何故狙われたのか、決戦の中で明かされたのはクロウゴースト、朝輝の秘密。自身こそが原因、という事に心折れそうになる中、叱咤激励にベリ太が飛び込んできて、また立ち上がり。

 

「ようし。もう遠慮はいらねーぞ古代人。全力でぶっ放せ」

 

そして、仲間達の手を借りて。クロウゴーストの中から真の力が目を覚まし。未来を切り開き、進んでいくのである。

 

正にSF、心踊るSFであるこの作品。SFで満足したい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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