読書感想:世界最強の魔法使い。だけどぼっち先生は弟子に青春を教わります

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様。皆様は、ぼっち、または陽キャリア充と言う概念をどう思われるであろうか。少し前は、リア充陽キャたちの青春という題材は一定の流行を見せていた訳であるが。それこそ一昔前は、ぼっちはまるで悪かのように描かれる事もあり、ぼっち脱却を目指すお話も多かったのだが、別にぼっち=悪、という訳でもないだろう。 ぼっちで何が悪い、リア充じゃなくて何が悪い。そも、別にぼっちを苦にしない人もいる訳であるし、リア充という言葉ひとつとっても定義は色々あり、何がリア充か、というのは正解は一つではない筈だ。

 

 

しかし、リア充を目指す、目指したいというのも別に悪い感情ではないだろう。と、言う訳でこの作品はコミュ障で陰キャ、ぼっちな少女、セレネ(表紙右端)が弟子達に青春を教わりながら、リア充を目指すお話なのだ。

 

「セレネ様って本当に残念ですよねえ」

 

アイネル魔法学院、そこに130人しかいない魔法使いの頂点、「マスター」の称号を持つ彼女。しかし秘書であるミルテに馬鹿にされるほど、陰キャでコミュ障。類まれなる魔法の素質により飛び級でマスターの称号に辿り着くも、誰とも馴染めず、日々研究室に籠り「リア充魔法」なる自作の魔法を研究する日々。

 

「あなたクビね」

 

しかし、突然学院長であるアンナ先生から告げられたのはクビ宣告。マスターの大切な仕事、弟子と言う後進の育成。しかしセレネは全くしておらず、職員会議で決まった三人以上弟子を持つ、という方針を全く守っておらず。一先ずお願いし倒し、何とか一月の猶予を貰う事に。

 

「先生になっちゃいますぅ! だから離れてくださいっ・・・・・・!」

 

が、しかし。ミルテが勝手に作成しばら撒いた弟子募集のお知らせでやってきた子達がまたとんでもなかった。王族故にセレブ的思考なイリア(表紙三人右)、不良らしく短気な前科持ちのメローナ(表紙三人中央)、ハーフサキュバス故に周囲を意図せずして魅了してしまうプラミ(表紙三人左)。セレネからすれば怖い相手、避けたい相手。弟子にはするも、接する事が出来なくてまともに授業も出来なくて。

 

「だからリア充の最先端である私たちが、セレネ先生を青春的に楽しませてあげますね」

 

業を煮やしたイリアたちに拘束され、話しを聞きだされ。そこでイリアが提案したのは「青春契約」。セレネからすればリア充な三人が彼女を青春的に楽しませる代わりに、魔法を教えると言うもの。

 

魔法を教える代わりに、三人とプールで遊んだり。プラミとお出かけしたら大惨事になったり、メローナと一緒に牢獄に囚われてみたり。賑やかな日々を送り、時に彼女達を邪魔しようとする者達を巻き込んで大騒ぎを繰り広げて。

 

「セレネ様は、順調にリア充への階段を上っていると思いますよ」

 

教え子たちの抱える問題に、真っ直ぐに向き合って。陰キャなりに、先生として。生来の気の優しさで、頑張って助けようとして。そんな日々の中、少しずつリア充への階段を上っていくのだ。

 

ドタバタで賑やか、コミカルな中に仄かな百合らしきものがあるこの作品。肩の力を抜いて楽しめるお話を見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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