
さて、小学校から大学まで、学校は別名学び舎、と呼ぶ事もあるのだが。規模的に最大な学び舎、というとどこになるのだろうか。例えば私の住む県には、街一つの規模の大学が存在していたりするのだが。大体は街一つくらいが最大規模、と言えるのだろうか。まぁ大体そのくらいであるのかもしれない。しかし、この作品の舞台である天涯学園はそんなものではない。街一つ? 否。 市一つ? それも否。なんと半島一つ、がまるごと学び舎なのだ。
相模灘に突き出た半島、そこに幕末期に設立された私立校が始まり。設立者も教員も、生徒も皆志が高く、野心家揃い。卒業生たちが次々に政財界に進出し学閥の根を張り、数々の特権を勝ち取り。いつしか陸の孤島として、学芸都市として独自の発展を遂げ、物語開始の十一年前、「文教特区法」という法律で最大限の自治を勝ち取った天涯学園。ここは生徒が教員を雇い、学園を運営すると言う国。抱える学園は五百以上、生徒も合計二十五万人以上。
「このわたしが一生涯添い遂げ、尽くす方ですので!」
そんな、この自治国へ教員として招かれた「ぼく」。しかし玄関口に到着して早々、爆弾騒ぎに巻き込まれ捕まりそうになり。そこへ現れたのは、凰華(表紙)。全ての学び舎を束ねる生徒会の会長。初対面なのになぜか好感度の高い彼女により事件の真相はあっさり明かされ。「ぼく」、は生徒会執行部の顧問として迎え入れられる。
生徒会執行部に属する、凛々しい副会長、竜胆や装備開発系幼女な書記、アルテ。貧弱な庶務、緋奈乃といった面々と顔合わせ。その後に伝えられるのは、鳳華の最終的な目標。
「わたしのたどり着いた答えはこれです」
それは、この天涯学園の完全な独立。その為に必要なのは強固な経済基盤。その為に必要なのは、生徒会長を輩出する、七つの家を完全に屈服させる事。その方法を学ぶ為に、「ぼく」は呼ばれたのだ。その前に、凰華から頼まれたのは、裏切り者探し。彼女達の学舎に潜むスパイを炙り出せ、というもので。
これよりすべては動き出す。一つの事件から全てが繋がり、歩き出す。巻き起こるのは凰華の又従姉妹である珠音との、互いを屈服させるための激突。
「わたしたちの先生!」
その中、明かされるのは凰華が仕掛けた一つのトリック。我々読者にとっても、微かな伏線を以て示されてはいたが、完全には読み切れぬかもしれなかった、仕掛けられた罠。それは「ぼく」、先生の真実。その価値を認められた、その高すぎる価値を。その価値の源泉、そして凰華により救われていたという真実を。
正に極大、個性的に過ぎる人物が見渡せぬ程の舞台で暴れるこの作品。真っ直ぐに心が熱くなる作品を読んでみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。