読書感想:テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~

 

 さて、別に自慢する訳でもないが私、真白優樹はかれこれ十数年の歴があるラノベ読みである。それがどうした、と言う訳ではないが。ラノベ読み歴が長くなるとあるある、だと思うのだがジャンルごとにおけるテンプレを理解してしまうと、物語のこの先の展開が読めてしまう、という事が発生しないだろうか。実際、こうも長々とラノベを読んでいると大抵のテンプレは全部触れて来たので、テンプレばかりのラノベよりは、新たな道のりを切り開いてくれるラノベを求めている面もあるのである。

 

 

さて、そんな前置きはまぁいいとして。この作品はラノベ世界に転移、という珍しい状況から始まるお話であり。テンプレなんぞ知った事か、と突き進むお話なのだ。

 

地方都市に住む読書好きな少年、海斗(表紙左下)。ある日、惰性で読み続けていた人気ラノベの最終巻を数時間かけて読み終え、一言。俺には刺さらなかった、と。設定は良いんだけどハーレムが合わん、とぼやきひと眠り、目が覚めたら異世界。彼はそのラノベの、本来の主人公を追放して序盤にやられる小者キャラ、「カイト」として召喚されてしまう。

 

この世界はほぼ全て、魔神と眷属である魔族に支配されており。彼を救世主として本来の主人公、リクトと共に召喚したのはデラルテ王国第一王女、クリスティナ。(表紙右)。

 

「単純なハーレム物に飽き飽きしていたところだ。やってやるよ、俺のシナリオでな」

 

召喚されて自身の状況を知って。海斗は決意する。気に入らなかった物語、シナリオ何て知った事か、と。己のシナリオで物語を動かす為に、手に入れた骨を操るジョブ「邪骨士」の力を用い動き出す。

 

「その子を送るついでに、世界を見てこいよ」

 

まずはリクトを追放する、だが本来のシナリオ通りではなく、自分から出ていくような形で。奴隷のエルフ少女を解放した彼を、故郷まで送っていけ、と一年はかかる旅に送り出して。

 

続いては今後ざまぁされる三人、「賢者」のギャンブル狂、マルセドニーや「聖騎士」ながら酒好き、ハインツ、信仰心の欠片もない「聖女」のナディアを屈服させ仲間に加え。「魔王の骨」というキーアイテムを探す、この国を支配する、魔族の中でも最強の十二人、「執政官」の一角を先んじて用意した罠に嵌めて殺し。やり方は捻くれてはいるが一応は救世主として、動いていく。

 

だが忘れてはいけない。海斗はそもそも一般人、情報アドバンテージがあるだけ。そしてうまくいっている時が一番予定は狂わされるもの、という事を。続けてドワーフの国の解放へ向かおうと、本来はリクトのハーレムの一人、暗殺者のヨルハも仲間にする中で。 本来は自分の領地から動かぬ筈の執政官が動き出すと言う予想外の動き。そこに対応する為に先に眷属を倒しに向かうも、三人は全く成長せず。失望して別れを告げる。

 

「覚悟を決めなくちゃいけないのは、俺だった」

 

だが、それは逆に引き金となる。使命に目覚めた三人は決戦の場に駆け付け、海斗もまた覚悟を決めて魔王の骨を取り込んで。全員の力で、決着を齎す。

 

けれど海斗はまだ知らない。ラスボスの条件に近づきつつある己の今後を。本来の歴史とは違う行動をとりだしたリクトが、違った形でハーレムを作り始めているという事を。

 

捻くれている主人公による、一筋縄ではいかぬ改変ものなこの作品。簡単にはいかない作品を見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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