さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様はゴーレムと言う存在をご存じであろうか。ドラクエのゴーレムであればどこか愛嬌があるかもしれないが、ぬ~べ~に出てきたゴーレムは割と生理的嫌悪感を煽るデザイン、と言えたかもしれない。画面の前の読者の皆様においてはゴーレムと言うのはどんな印象であろうか。その答えは各種あれど、ゴーレムと言うのは時に宝を守る者として書かれる事も多い。宝箱の前に強敵として存在したりするのである。
そんなゴーレム、という割と驚きの前世を持つのがこの作品の主人公、レナ(表紙左)である。 神獣と呼ばれる獣達が存在した神話の時代がある異世界、人間の都、「エデン」を守護していたゴーレムたち。その「七番目の子」、出来損ないとして生まれ。小さき者を守れと言う命令に殉じたもの。
「一つお願いがあるんだ。なあに、君にとっては手慣れたことさ」
その意識は万年の後、人間の子供として目覚めた。彼を人間として生まれ変わらせた「魔女さん」から色々教えられながら共に過ごし数年、彼が依頼されたのは小さきもの、人間の女の子を守れというもの。それから数年、成長した女の子、リリス(表紙右)を主として。レナは従者として、共に魔導魔術学園へと入学する。
リリスの父親、闇の大皇帝と言われた魔導師、アレイザード。暗黒の時代を築いた彼に、最高の贄として育てられた彼女は正に、魔術師にとってはおとぎ話の聖杯と同義、垂涎の的のトロフィー。 だが縛られるのは嫌だ、自由を求めると敢えて戦う事を選んだ主の従者として。 学園を支配する「百血同盟」と呼ばれる家たちの代理戦争の場へと飛び込んでいく。
レナを待っているのは何だろうか。それは、今まで守ってきた人間達の黒き部分。何故か退学をさせようとしてくる級友、サリアに懐かれたり。 早速決闘に挑んでいく主を守る為に、かつての己の力の一端を晒したり。
「―――私のレナは、誰にも負けないわ」
そして襲い来るのは人間だけではなく。独自の思惑を持つ名前持ちの悪魔達までもが襲来する。だけど、今、自分の背には。守るべき小さなものがいる。自身の勝利を疑わぬ主がいる。
「―――では、それと同じ数だけ僕が守りましょう」
ならばこそ果たすべきは己の本分。守護者である自身の為すべきは、守る事。故にレナの確認、宣告の元に目覚めていく。神代の世界の再演、文字通りスケールの違う淘汰の暴力の波が。
真っ直ぐに大きく重めな世界で、主従の絆が光るこの作品。心熱くさせるファンタジーを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
楽園守護者の最強転生 1 出来損ないの神話のゴーレム、現世では絶対防御の最強従者になる (HJ文庫 こ 06-02-01) | 紺野千昭, 江田島電気 |本 | 通販 | Amazon