さて、科学、化学というのは主に理系の分野にカテゴライズされる学問であり、高校生辺りに理系の分野を選べば本格的に学ぶもの、かもしれない。そんな学問は、専門性を極めると分野の知識がない者からすれば何を話しているのか分からない、と言えるものかもしれない。この作品はそんな、化学、理学を元に日常の様々な謎を解き明かしていく、ひとつの青春を描いていくのだ。
「いきなりこんなもの渡して、ごめんね」
高校三年生の夏、日陰者を自称する、植物に詳しい理系オタクの樟。夏の終わりのある日、ちょっとしたけじめとして友人である理桜(表紙)が渡してきたのは、懐かしき花、カタクリの押し花。それを見、思い出すのは出会い、今までに歩んできた日々。
共に化学部に所属していた友人、隆一と同じ高校に進学し、新しい日々が始まってすぐに出会った理桜に何気なく話しかけられて。
「じゃあ検証してみようか・・・・・・科学的に!」
何となく話が合う、と感じたのも早々、隆一が持ち込んできたのは裏山に生えた日本の桜が作り出す猪目の模様が今年は誰も見ていないと言う噂。隆一に連れられ裏山に行ったらわざとらしく置いて行かれ、更にそこへ別の名目で呼ばれた理桜が来て。結果的に二人で調査、もとい科学的に何故見えなくなったのかの検証をしてみる事に。結果として樟の草花の知識が謎の解決に繋がる。
「今日の謎解きは、あまりにもよくできすぎてたよな」
始まる部活勧誘、級友である数学マニア、綾に連れられ訪問したのは化学部と物理部、そして活気のない生物部。科学部のつかみどころのないギャル、汀と物理部に属する綾の兄で生徒会長、昭文が仕掛けてきたとある策を解き明かし、思いに心打たれて生物部に入ることになるも、そこに感じるのは微かな違和感。
「理桜はあなたのことを知りたがっていた」
いきなり生物部に入学してきた理桜の友人、麗にお願いされ街を案内する事になり。ふと見つけた、伝説のある木の樹齢の謎を考えて、麗の考えを聞いて。
「ほら・・・・・・科学的に!」
生物部の密室から逃げ出したハムスター、その行き先を四人で、化学的に突き止める。
「青春にトリックなんてない。誰かの足掻きと、そうさせる理由があるだけだ」
その先に突き止める、この学校に潜む魔物、指示役の正体。トリックなんてない、それは小さな巨人を殺させない為の、足掻き。
「ああこれで、私もようやく花を咲かせられるのかな、って」
その足掻きの意味に、樟は理桜の事を思い怒りを示して。それを聞き、理桜は笑顔になって。 先の未来、カタクリの花ことばを調べる三月までの道は始まるのである。
小さな謎と科学が交錯する中に、瑞々しくて爽やかで真っ直ぐな青春があるこの作品。ここにしかない青春を見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: よって、初恋は証明された。 -デルタとガンマの理学部ノート1- (電撃文庫) : 逆井 卓馬, 遠坂 あさぎ: 本