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読書感想:氷結令嬢さまをフォローしたら、メチャメチャ溺愛されてしまった件2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、アリシアとグレイ、二人の恋。既に少しずつ認められている訳であり、外堀は順調に埋まりつつあるともいえるが。アリシアが乗り越えなければいけぬ壁、というのは何となくお察しではないだろうか。それはご家族への挨拶。挨拶? と疑問に思われた読者様は前巻を思い出してほしい、認めてもらうべき相手がいると言う事を。
それこそはグレイの実姉であるシルヴィア(表紙中央)。第三王子、アウグストと結ばれ今は王族である彼女。つまりアリシアよりも立場は上手。そんな相手を乗り越えていくのが今巻なのである。
何故かアリシアたちのクラスの教師としてやってきたシルヴィア。教科書は既に丸暗記していると言う天才性を見せつけ、全ての教科を担任し。令嬢たちに貴族令嬢としての真っ直ぐな教育をし、きちんと一人一人を見て評価をし。
「貴方のような女に、私の可愛いグレイを預けておくなんてできないわ」
しかし彼女は、アリシアへと敵意に満ち溢れた目で憤怒の表情で評価を下す。それは私的な感情、と言う訳ではない。その理由はアリシアの何気ない言動に根付いた貴族令嬢としての性。口では対等と言い、そうありたいと努力はしているも、根底は変えられていなかった貴族性。それは乗り越えられぬ壁、に近いもの。
「貴方たちはどうやってこの問題を解決してみせる?」
王城に連れ去られシルヴィアの溺愛で子供返りしたグレイが混沌を巻き起こしたり。その中でシルヴィアは、アリシアに二人が生まれ育った貧民街を案内し。下賤な人間性と掟を守らぬ者は子供でも容赦されぬ弱肉強食を見せつけ、更には貴族に根付く純血主義と身分主義の一端を教え、それを二人に課題として出す。
それは、シルヴィアが先に経験した道。グレイとアリシアがこのまま付き合い続ければ確定で巻き込まれる道。 この国に長く根付いた主義という考え方、それを如何様にすれば乗り越えられるのか?
「誓えません。そんなの、無理に決まってますわ」
アリシアの答え、それは誓わない。その真意は今は誓えない、真実を見てしまったから。だからこそ強くなる、グレイを守り抜けるほどに。その願いと並ぶように、グレイも使用人をしながら騎士学校に通う事になり。シルヴィアにアリシアは師事する事となり。
「どっちにしても、私が優勝する結果は変わりませんので」
「最愛の人との婚約を発表するわ!」
例え地獄のような道程でも、認められるために突き進み。それぞれの戦いの集大成となる大会とコンテストで、二人の積み上げてきた思いは結実し。
「・・・・・・ほんっと、メチャメチャ溺愛されているのね」
その先に待っているのは、結ばれれどドタバタな未来。溺愛される彼の日々はこれからも続くのだ。
乗り越えていく熱さと甘さが一つの形になる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
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