さて、そろそろ八月も終わりを迎えて来て、台風も来たりして暑さも収まっていたり、する気がするような気もする。とまぁそんな話題はともかくとして、八月の終わりというのは学生、特に高校生にとっては夏休みの終わり、という事にでもなるのではないだろうか。八月が終われば多分待っているのは、イベント満載の秋。それが楽しみか、そうでないかは各人それぞれの心持ち次第であろう。これはそんな、夏の終わりのお話なのだ。
「しばらくはやめておこうと思う」
物語開始の一年と一月前、一学期の終業式の日。友人関係に悩み退学届けを出そうとしていた女子高生、凛(表紙)。何気なく訪れた屋上で出会ったのは、眉目秀麗、成績優秀なクラスメイト、光が自殺しようとしている現場。彼女との会話で、あっさりと翻意し、連絡先を交換し何気ない交流の中で実は趣味が似ていると分かるも、光側からの連絡が途絶え交流がなくなり。休学し四月からもう一度、凛は二年生として通いだすことに。
「久しぶり」
そんな彼女の元、また光は現れ。母親にスマホを取り上げられていた、と語る彼との交流はまた始まり、あっという間に夏休み。かつての級友から聞かれたのは、光と連絡が取れないと言う事。
「母さんを殺してきた」
そんな中、ひょっこりと姿を現した光は証拠とばかりに持ってきたマニキュアの塗られた幾つもの爪と一緒に衝撃的な事を言い。彼に誘われるまま、共に逃避行に出ることに。
「ところでゲームを考えたんだけど、聞いてくれる?」
彼が提案したのは、八月が終わるまでの七日間、一日独りずつ、合計七人。互いの殺したい人を殺そう、というもの。 反対するも、生きていく理由も別になく、失うものも別にない、という自分に気付き、惹かれるのを抑えきれず。一先ずビジネスホテルに泊まった翌日、義理の父を殺してきたとあっさり語る光に、自分の未来をかける価値を見出し。彼についていくことにする。
始まるのは、かつて住んだ町と今の町を巡る逃避行。殺したい相手は、かつての級友や教師、今の友人。時に急死で標的を失くし、一旦お休みになったり。時に思いをぶつけ合って、手が下せなくて、結局光の殺しの現場を目撃する事になったり。
それはバケモノと、バケモノのなりそこない、二人の道程。殺人によって繋がる、歪んだ関係性。
「最後に、このゲームを始めた目的を話すね」
そして辿り着く最後の場所、語られるのは光の思い。それはバケモノの恋。執心しのめり込むように愛していた、だからこそ彼女の為にという思い。
「私も、光のことが好きだったよ」
それこそは歪んだ独占欲が如き、醜き愛。けれどそれは確かに愛。その愛を永遠のモノにするために迎えた終わり。その先に、遅すぎた恋に気付き、だけどそれは届かない。
果たしてこの物語はこの終わりしか、無かったのか。それは今となっては誰にも分からぬ。だけど確かに、ここにあったのは愛だったのだ。
そんな複雑な気分になれる話を見てみたい読者様は是非。