
さて、勘違いというのは誰にでも起こりうるものであるが、他人からの評価というのにも勘違いというのもあるであろう。自分ではいい方向に解釈していたとしても、他人は悪い方に解釈しているかもしれない。結局、他人からどう評価されるかというのは他人からの解釈というのにもよるのかもしれない。 この作品の主人公、レイテ(表紙)もまた勘違いしている。それは良い方向なのか、悪い方向なのか。それはこれから見ていきたい。
「これから荒れそうねぇ。政争に巻き込まれるのは勘弁だわ」
魔物やらギフトと呼ばれる一人一つのスキルが存在するとあるファンタジーの異世界。この異世界にあるストレイン王国。その王国の辺境伯として、未開領域と呼ばれる場所から来る魔物に対する仕事をしているレイテ。死亡した両親に代わり僅か十六歳にして領地を切り盛りする彼女。最近の悩みは、十六歳なのに十二歳から身長が伸びていない事。
彼女の元に、半月遅れで王都から届いた新聞に書かれていたのは。王都にて革命が起きて、第二王子が実権を握ったという事。 派閥には所属していない、それにこの辺境伯というのは大切な仕事。だからこそとりあえずは放置でいいか、と思う中でやってきた奴隷商人から数十人の傷病奴隷を買い込む。
「ならば数十億の価値ある偉業くらい、いつかは打ち立ててくれるでしょう?」
買い込んで早速、数十億は下らぬレアアイテムで奴隷たちを治療し、悪役らしく笑って。だがそこで衝撃の事実は明かされる。実はその奴隷たちは革命に敗れた王国騎士団であり、その中には第一王子、ヴァイスが混ざっていたと言う事を。更にヴァイスはレイテの意図せぬ叱咤激励により覇気を取り戻して。現政権への爆弾を抱え込んでしまうも最早放り出せず。ヴァイスを護衛に、騎士団を領兵とし、いつもの日常へ戻っていく。
「ああ・・・・・・目が焼けるほどに見ていたよ」
レイテの護衛として彼女の隣で。ヴァイスが見ていくことになるのは彼女の中、彼女にとっては悪人の、しかし実際には王の器。十万以上の領民の数を把握、更には七割の領民の情報を事細かに記憶し。 貧乏な子供達にはお使いのお礼にお小遣いを渡し、自身のギフトで領民たちの病気を見抜き。更には他の領地から来た者も、ホワイト企業そのものな待遇で雇い入れて見せる。
「ふむ、レイテ嬢はとても慕われているのだなぁ」
そんな彼女に仕えるのは、それぞれ運命的な出会いをした者達。極悪傭兵組織の元幹部が執事、更には禁忌の研究で追放された万能の天才科学者まで。そしてヴァイスは特訓気絶大好きな脳筋タイプ。 不意にボケを見せる従者たちに思わずツッコミを入れたりしつつ。
「そりゃ聖女とも謳われるよネェ普通」
部下達と共に過ごすのは賑やかな日々。王都の方では何やら戦争が起きているようだけど、今この時だけは平和を。
真っ直ぐに笑える、勘違いから出る善行が眩しめなこの作品。作者様のファンな皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。