読書感想:こちら、終末停滞委員会。

 

 さて、時に「停滞」という言葉はどんな印象を抱かれているだろうか。動きが止まっている、何も変わらない。といった印象を抱かれる方も多いかもしれない。しかしそれは言い換えれば現状維持、という言葉になるのかもしれない。いい方向に変化するのか悪い方向に変化するのか分からない、それならばいっそ変わらない、くらいの方が良いのであろうか。

 

 

この作品はそんな、停滞という言葉が重要になる。終末停滞委員会、とはなにか。それはとっくに、誰もが気付かぬ所で滅び、終末を迎えつつある世界を、ひとつずつ終末を潰して少しでも延命させよう、という奇特な奴等の集まりなのだ。

 

中学を卒業する前にメキシコのマフィアに拉致監禁、奴隷として自身の「人の思考を読む」不思議な力を利用され。しかし邪魔になったので船に乗せられ捨てられようとしている少年、心葉。期待した分だけ痛めつけられるから、と諦めて。その心の中に当たり前の青春への羨望を燻らせて。 彼と同じ船に乗っていた謎の美少女、「魔王」と名乗った彼女はいきなり影の怪物を呼び出し船を沈めて。 いきなりの自由、湧き上がる運命への怒り。だが彼は善性を捨てきれず。溺れかけていた、自身を友と呼んだ男に海に浮かぶ為の板を託し、自身は一縷の望みをかけて泳ぐも、あっけなく死を迎える。

 

次に目覚めた時、目の前にいたのはLuna(表紙)と名乗るメイドさんと、まるで女神のような神々しい女性。異世界に転生させてあげる、という彼女の言葉に夢を見出すも、その思考の中に合った境界領域商会、という言葉が気にかかって。その次の瞬間、女神が示した扉の向こうから溶けた人間達に襲われそうになり。

 

「―――終末停滞委員会。終わってる世界を護り続ける、馬鹿な者好きの集まりです!」

 

そんな場面に乱入してきたのは、巨大なギターという荒唐無稽な武器を構えた少女達に率いられた、数十名の少女達。 助けられたのも早々、麻酔により眠らされ起きたら異端審問会に出され。助けられていたけれど、「終末」という名の化け物であるが故に廃棄されようとしていたLunaを、自分達も協力するから仲間に入れろと直談判。未来を読む、という自身の「終末」に有用性を見出され処分を保留され。心葉は、自身たちを保護した「蒼の学園」の生徒会長、エリフから基本的な説明を受けることに。

 

この宇宙は寿命により滅びかけていて、この世界のほころびこそを「終末」と呼ぶ。十段階の進化に別れるそれは、すでに今年に入って一万二千件以上、しかし解決できたのは六分の一くらい。つまりはヤバい、もうかなり詰んでいる。それでもこの次元の隙間にいつの間にかあった、居住可能な空間は一パーセント以下な、地球の五倍以上の面積を誇るこの都市にある学園で。停滞が精いっぱい、だとしてもそれを為そうとしている事。

 

そんな世界は戦いばかり。しかし、今まで暗きに過ぎた心葉にとってはそれは眩しき日々。人類最強の先輩、ひかりに振り回されたり中等部一年、ニャオに絡まれたり。他校の学園から勧誘もされたり、ラッキースケベ的なイベントもあったり。

 

「―――一生を懸けて、キミを護ってあげてもいいよ」

 

彼の事を、Lunaは裏でこれでもかと心配していく。どんどん戦場に溶け込んでいく彼を引き戻したいと。幸せになって欲しいと。 それでも、もう見逃すことは出来ないからと自分の道を行く。

 

「行こう、Lunaさん」

 

「うん、ご主人さま♪」

 

どれだけ傷つこうとも、ボロボロになっても。守りたい、その思いだけを。その思いが彼女と重なる時、契約は結ばれる。二つの終末が重なって、新たな切り開く力となるのである。

 

縦横無尽に要素が駆け抜け、正に混沌の中を駆け抜けるよう。しかし、この「好き」が詰め込まれた面白さは嘘じゃない。 正しく心を撃ち抜かれるような面白さがあるのだ。

 

そんな、心撃ち抜く面白さを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: こちら、終末停滞委員会。 (電撃文庫) : 逢縁奇演, 荻pote: 本